週に一度は西部劇

録画していた『馬と呼ばれた男』(1969年/監督:エリオット・シルバースタイン)を再見。19世紀初頭、アメリカへ狩猟にやってきた英国貴族がインディアンに捕まり、やがて彼らの仲間となり、インディアン戦士として活躍する物語。

親衛隊の指揮官だったジョン・モーガンリチャード・ハリス)は貴族生活に不満を感じ、アメリカのダコタ地方に探検狩猟にやってきます。水浴中にスー族が彼のキャンプを襲撃。モーガンは裸のまま捕まり、酋長のイエロー・ハンド(マヌ・ツボウ)に“馬”と呼ばれて部落に連れてこられ、イエロー・ハンドの母バッファロー・カウヘッド(ジュディ・アンダーソン)にこき使われます。部落には5年も捕まっている英語が喋れる他部族インディアンのバティース(ジャン・ガスコン)がいて、彼からスー族の知識を習得。そんなある日、スー族と敵対するショショニ族の偵察員2人を殺して馬を奪ったことからイエロー・ハンドに認められます。イエロー・ハンドの妹ランディング・ディア(コリンナ・ソベイ)と愛しあうようになり、結婚のための苦行の儀式にパス。幸福な日々もつかのま、ショショニ族が部落を襲撃し……

公開当時、生活や儀式を通じて、それまでのどんな西部劇よりもインディアン(スー族)の世界を忠実に描いた作品として評判になりました。だけど、インディアン研究の専門家によると、間違いも多いようです。ジョン・モーガンがスー族の仲間入りしてランディング・ディアと結婚するために、胸の肉を裂いて宙吊りにされる“太陽への誓い”の儀式には驚かされましたが、これはマンダン族の“オキーパ”という儀式だったそうです。

白人男性が愛したインディアン娘は死ぬ運命にあるという図式、白人リーダーの指導のもとに襲ってきたショショニ族を撃退するという図式は、従来の白人至上主義で不満はありますが、インディアンの生活にズバリと入りこんだ映像は素晴らしいです。平原インディアンの生活を記録したジョージ・カトリンの絵画に見られるような場面が数多くありましたよ。

そして、この映画はリチャード・ハリスの存在なくして語れません。誇り高いイギリス貴族が、スッポンポン(当然ボカシ入り)でインディアンにひっぱりまわされ、馬と呼ばれて(アソコが馬なみに大きかったのかな)酋長の母親にこき使われる。恐怖にまさる屈辱感にズタズタにされても、勇気をもって次第に立ち直っていく過程の演技は、リチャード・ハリスならではです。

ちなみに、音楽を担当したのはレオナード・ローゼンマン。続編として『サウス・ダコタの戦い』があります。