続いて

録画していた『太陽がいっぱい』(1960年/監督:ルネ・クレマン)を再見。ルネ・クレマンの映像とニーノ・ロータの音楽がマッチした名作サスペンス。

貧乏青年のトム・リプリーアラン・ドロン)はイタリアで放蕩生活をおくっているフィリップ(モーリス・ロネ)を連れ戻すように親から頼まれフィリップと親しくなりますが、金にものを言わせて遊びくれるフィリップに嫉妬。フィリップは恋人マルジュ(マリー・ラフォレ)をヨットに連れてきて仲の良さをトムに見せつけます。マルジュが下船し、トムはフィリップ殺害計画を実行。トムはフィリップになりすましますが、フィリップの友人フレディがそのことに気づき、トムはフィリップの仕業にみせかけて殺害。そしてフィリップ自殺の工作をし、かねてから惹かれていたマルジュの心を射止め、完全犯罪に成功したかにみえましたが……

ニーノ・ロータの甘美な旋律、ナポリやローマをふらつくアラン・ドロンを追ういきいきとした移動撮影(アンリ・ドカエのカメラの見事さ)、甲板の殺人シーンでのクローズアップと海上にただようヨットのロングショットへの切り替え、何もかも一流です。コンプレックスが殺意に転化するプロセスを誰もが納得する必然性にしてみせたアラン・ドロンの名演技。ヌメッとしたモーリス・ロネの冷たさ、

謎めいた硬質な個性美があるマリー・ラフォレの魅力。役者もいいねェ。

ちなみにパトリシア・ハイスミスの原作ではトム・リプリーは逮捕されず、その後“リプリー”シリーズとして全5作発表。