懐かしのサスペンス

録画していた『死刑台のエレベーター』を再見。ルイ・マルのカメラ映像とマイルス・デービスの音楽がマッチした名作サスペンス。

会社の社長夫人フロランス(ジャンヌ・モロー)と不倫しているジュリアン(モーリス・ロネ)は、会社で社長を自殺に見せかけて殺害。置き忘れた証拠を取りに戻った帰りに乗ったエレベーターが、電源を切られて動かなくなります。その頃フロランスは、待ち合わせ時間にジュリアンが現れず、ジュリアンを捜して夜のパリを奔走。ジュリアンが乗ってきた車が若い不良カップルに盗まれ、二人はドイツ人夫妻の車を盗もうとして見つかり、夫妻を殺害。現場に残されたジュリアンの車から、シェリェ警部(リノ・ヴァンチュラ)はジュリアンを指名手配。翌朝やっとのことでエレベーターから脱出したジュリアンはシェリェ警部に逮捕され……

ヌーベルバーグの旗手ルイ・マルの初監督作品。マイルス・デービスのモダンジャズ(マイルスは映画の画面をスタジオで見ながら即興で演奏)が流れ、ジャンヌ・モローの極大アップから始まる映像表現など、当時は新感覚のサスペンスとして評判になりました。ジュリアンの行動、フロランスの行動、不良カップルの行動が並列的に描かれ、際立った対比で展開。狭いエレベーターの中での孤独な苦闘、高速で走らせる不良カップルの車の移動、圧巻はパリの夜をさまよって歩くジャンヌ・モローの描写です。

ジャンヌ・モローは、私が齢を重ねて魅力がわかってきた女優。めったに笑わず、ジッと相手をみつめて話す彼女に、男は心の内を見透かされてしまいます。そうなると、男は彼女の言いなり。なげやりながら、自信があふれているような歩き方。自分の好きな種類のタバコ以外は、たとえ切れた時でも吸わぬというこだわり。大人の妖しい恋のムードに酔わせてくれます。彼女の魅力は、外見から醸し出されるものでなく、内面からにじみ出てくるもの。それは、年とともに美しさと個性の魅力を増してきた感じがしま~す。