週に一度は西部劇

録画していた『折れた槍』(1954年/監督:エドワード・ドミトリク)を再見。一代で大牧場を築いた父と息子たちの確執を描いた社会派西部劇。

物語はデブロウ家の4男ジョー(ロバート・ワグナー)が刑務所から出てくるところから始まり、サグアロサボテンを背景にガラガラ蛇を抜き射ちする何でもないシーンに西部劇を感じます。ジョーが荒れ果てた屋敷に帰ってきたところから回想。ジョーの父マット(スペンサー・トレーシー)は、先妻を亡くし後妻に迎えたインディアン妻(カティー・フラド)を愛し、その妻との間に生まれたジョーを可愛がっていたんですな。ジョーも父の期待に応え、牧場の中心的存在になっていました。先妻との間に生まれたベン(リチャード・ウィドマーク)、マイク(ヒュー・オブライエン)、デニー(アール・ホリマン)の3人はそんな父に不満を持っており、とくにベンは父の厳しい躾に恨みを持っています。ある日、川に流れ込んできた銅山の廃液から牛が死に、デブロウは精錬所に抗議にいき、話がつかず乱闘になり精錬所を破壊。鉱山はデブロウを訴え、父のためにジョーが責任者ということで罪を被るんです。デブロウはベンたち3人の息子に背かれ、失意のうちに死にます。牧場の土地を売って町で事業をしているベンは、出所してきたジョーを追いはらおうとしますが……

ジェローム・ワイドマンの小説を映画化した『他人の家』(1949年/監督:ジョゼフ・L・マンキーウィッツ)の脚本を西部劇に翻案したもの。ドミトリクは、人種偏見・法と正義・父子問題などを、西部劇アクションを交えて卒なく描いていますが、この作品がハリウッドの赤狩りにあい、転向をよぎなくされた復帰第1作であることも注目です。銅山との裁判において味方してくれると思った親友の知事(E・G・マーシャル)が、政府が銅山を支援していることから傍観の立場に回り、和解の条件でジョーを入獄させることになったデブロウの姿にドミトリクの心象が投影しています。自分の手を汚さず、ジョーが愛する女性(ジーン・ピータース)と旅たつラストは辛口だった流れからみると甘すぎますが、全体としてはしっかりした演出で見応えのある作品になっています。

再見して気づいたのは、牧童頭がインディアンだったのは、この作品だけじゃないですかね。