懐かしの清張ミステリー

録画したことさえ忘れていた『点と線』(1958年・東映/監督:小林恒夫)を観る。松本清張の最初の長編小説で、清張ブームのきっかけとなった作品の映画化。

福岡市香椎の海岸で心中と思われる死体が発見されます。男は産業建設省の課長補佐・佐山(成瀬昌彦)で女は赤坂の割烹料亭“小雪”の仲居・お時(小宮光江)。福岡県警のベテラン刑事・鳥飼(加藤嘉)は、心中にはふさわしくない淋しい場所で死んでいたことと、特急あさかぜの食堂車の伝票が佐山ひとりだけのものだったことから不審を抱きます。死体の確認にきたお時の同僚・八重子(月丘千秋)は、“小雪”の常連客・安田(山形勲)を見送りに東京駅に行って、お時と佐山が仲良く特急あさかぜに乗るのを目撃。お時に恋人がいるのは知っていたが、相手が佐山ということをその時初めて知ったと証言。佐山の兄(神田隆)は、弟に愛人がいることは知らなかったと証言。

佐山は産業建設省汚職事件の関係者で、佐山が死んで重要参考人だった佐山の上司・石田(三島雅夫)が釈放されたことから、警視庁捜査二課の刑事・三原(南広)が心中事件を調べに福岡にやって来て、鳥飼と出会います。八重子が目撃した横須賀線(13番線)からあさかぜのホーム(15番線)が見えるのは、1日の中で17時57分から18時01分の4分間しかないことを突き止め、安田が石田と深い関係にあったことから、安田による心中偽装と考える三原に同意した係長(志村喬)は捜査続行を決断。しかし、佐山とお時が死んだ時間には、安田は北海道に向かっていたというアリバイがあり……

事件を計画したのは、結核を患い鎌倉で療養している安田の妻(高峰三枝子)で、時刻表マニアなんですな。彼女の目的は、夫の愛人であるお時を殺すことで、単なる夫の協力者でないことが、作品に厚みをもたせています。ぎこちない南広の下手くそ演技にはしらけるし、小林恒夫は井出雅人の脚本をそつなく仕上げているだけで名作とはいえない作品ですが、高峰三枝子だけはグッド。沈んだ繊細な表情に女の情念を感じさせま~す。