観たかった最後は

DVD“フランス映画パーフェクトコレクション”に収録されている『美女と野獣』(1946年/監督:ジャン・コクトー)を観る。童話が原作の美女と野獣の愛を描いたラブファンタジー

持ち船が沈んで破産しかけている一家の末娘ベル(ジョゼット・デイ)は、いつも二人の姉娘からこきつかわれています。一隻が帰港したという報せがきて、ベルの父(マルセル・アンドレ)は山向こうの港へ出発。二人の姉は宝石や衣装を土産にねだりますが、ベルが欲しいと言ったのはバラの花。父が港へ着いてみると、船は債権者に差し押さえられています。やむなく、夜道を帰る途中、霧で道に迷い、たどり着いたのが荒れた古城。庭にバラの花があったので持ち帰ろうとすると、異様な怪物が現れます。姿は人間のようですが、全身に毛がそそり立ち、顔は野獣そのもの。野獣(ジャン・マレー)はバラを盗んだ罰に命をもらうと言いますが、もし娘のひとりを身代わりによこせば命を助けると約束。魔法の白馬で帰った父は森の出来事を話し、ベルが身代わりになって野獣の城に行きます。野獣はやさしくベルを迎え、ベルに求婚。ベルは野獣のやさしい心根に不思議な幸福感にひたっていきますが、魔法の鏡で父が心労のために病気となり、寝たきりになっていることを知り……

戦後、日本で公開された最初のフランス映画。野口久光氏は“想い出の名画”の中で、「私たちは久しぶりにフランスの香りにひたり、大げさにいえばヨーロッパ芸術の根の深さを身にしみて感じたものである。これはフランスでなければできない映画であり、映画史に残されるものである」と語っています。衣裳や調度品の豪華さ、照明効果の見事さ、目だけで感情表現(獅子のような仮面をつけているのでね)するジャン・マレーの立ち居振る舞い。様式美にあふれた映像表現は、現在でも古びていませ~ん。