マル暴刑事物語

録画していた『孤狼の血』(2017年・東映/監督:白石和彌)を観る。
暴対法成立直前の昭和63年、地場の暴力団・尾谷組と広島の巨大組織・五十子会をバックに進出してきた新興組織・加古村組が対立している呉原市の警察に大学出のエリート新人刑事・日岡松坂桃李)が赴任してきます。日岡はマル暴のベテラン刑事・大上(役所広司)の下に配属され、加古村組関連企業の経理社員失踪事件を捜査。大上は加古村組が関係していると睨み、組員を容赦なく締めあげます。凄腕ながら大上には暴力団との癒着など黒い噂が絶えずあり……
仁義なき戦い』へのオマージュを込めたという柚月裕子の小説を映画化。真木よう子江口洋介中村獅童ピエール瀧竹野内豊石橋蓮司滝藤賢一嶋田久作伊吹吾郎など出演者は大河ドラマに出てくるような顔ぶれで、広島弁が乱れとぶのですが役者によってはイントネーションが違っており、違和感を持ちました。雰囲気が違うんですよ。
警察と暴力団の癒着という背景の中で、まともな刑事・松坂桃李の目を通して、“正義は狂気”というべき悪徳刑事・役所広司人間性を描く手法は効果をあげています。真実がわかるとともに、表情が少しずつ変化していく松坂桃李の演技はグッド。暴力描写は半端なく凄まじいものがありますが、やりすぎると逆に可笑しくなりますね。石橋蓮司の首がとぶなんて、“ビックリ、ドッキリ、クリトリス”で~す。

f:id:nostalji:20190402070041j:plain



いったん帰京

母が左大腿骨頸部骨折で入院したため、帰京が予定よりズレ込む。
丁度訪ねた時に、読み終えた新聞をテレビ台に置こうとして椅子から起ちあがって転び、左脚が動かなくなりました。行きつけの整形外科でレントゲンを撮ったところ骨折がわかり、手術が必要ということで日赤病院へ緊急入院。何しろ高齢(92歳)なうえに色々な既往症を抱えているので心配しましたが、手術(股関節後方アプローチにて人工骨頭挿入)は無事終了し、術後の経過もよいので、従姉妹に後を頼んで、いったん帰京しました。
日赤は手術を要する患者を優先するので、離床リハビリの後は、リハビリ専門の病院へ転院予定。転院先の病院が決まれば、再度帰省します。

f:id:nostalji:20190321071302j:plain

移動や待ち時間で読んでいた白石一郎:著の時代小説『十時半睡事件帖東海道をゆく』(講談社文庫:2006年2月15日第1刷発行)を読了。
十時半睡事件帖』は、島田正吾主演のテレビドラマ(NHKで1994年9月16日~95年3月17日放送)で知っており、当時88歳の島田正吾が老成した演技を見せ、強く印象に残っています。本作品は、黒田藩江戸屋敷総目付の主人公が、息子を見舞うために国許へ帰る道中で起こる出来事を描いたシリーズ最終作です。派手なアクションシーンはなく、淡々と物語は進み、人生の不条理を悠然と見据えた味わい深い作品になっています。著者の逝去に伴い、完結することなく旅の途中で物語が終わっているのが残念で~す。


大悪党でなく

友人に送ってもらった西部劇『大悪党ジンギス・マギー』(1970年/監督:バート・ケネディ)を観る。小男のフランク・シナトラと図体のでかいジョージ・ケネディが、金と女をめぐってドタバタ追跡劇をするコメディです。
駅馬車中継所でホーク(ジョージ・ケネディ)は旧友だが悪党のジンギス・マギー(フランク・シナトラ)に山高帽に隠していた400ドルを巻き上げられます。頭にきたホークは近くの町に駆けつけ保安官に訴えようとしますが町に保安官はいません。娼館を営む女町長のベル(アン・ジャクソン)から保安官に任命され自ら追跡。逃走中のジンギスはインディアン娘のアンナ(ミシェル・ケリー)と仲良くなり、ニャンニャンしているところをホークに捕まります。しかし、アンナの手助けで脱獄。ホークがインディアンの襲撃と言ったことから、ベルは砦にかけつけ、ブリッグ将軍(ジョン・デナー)率いる騎兵隊を巻き込んで大騒ぎ……
主人公のジンギスは、拳銃は下手くそだが、女をくどくのは上手という賞金10ドルの小悪党。ライフルと交換に酋長(ポール・フィックス)から女を押し付けられたり、逃げ込んだ家の女教師(ロイス・ネトルトン)をニャンニャンに目覚めさせたりと、シナトラがニヤけて演技をしています。とぼけた味わいのある笑いには抜群の演出力をみせるバート・ケネディですが、ドタバタ調コメディとなると勝手が違うのか、空回りしている感じです。『夕陽に立つ保安官』や『地平線から来た男』に比べると今イチですが、それでも、銃撃騒ぎに捲き込まれるジャック・イーラムなんて可笑しさ満点で~す。

f:id:nostalji:20190321095817j:plain

画像は、シナトラとミシェル・ケリー。男性ファンが歓ぶミニスカ姿のインディアン娘です。
結婚式(披露宴)の出席と墓参りで帰省するので30日まで日記を休みます。


異色の顔合わせだが

西部劇DVDの『荒野の掠奪』(1941年/監督:リチャード・ソープ)を観る。名優のウォーレス・ビアリーとライオネル・バリモアが共演した作品です。
メキシコで牧場を営んでいるギル(ロナルド・レーガン)と叔父のヘンリー(ライオネル・バリモア)のところへ、幼馴染のルシア(ラレイン・デイ)が夫のモーガン(トム・コンウェイ)とニューヨークからやってきます。メキシコの盗賊ロペス(ウォーレス・ビアリー)の襲撃により、飼っていた牛は全て奪われ、ギルは負傷。ルシアがギルを看病する姿にモーガンは嫉妬。石油が埋蔵している可能性を知ったモーガンは、無一文になったギルから牧場を買いとろうとしますが、ロペスが再び現れて……
でかい図体と悪党面をユーモラスな演技で活かして独特の魅力を出しているウォーレス・ビアリーですが、いささか過剰演技。彼の相手をするのが、ライオネル・バリモアなんですが、これまた過剰演技。この二人が浮いていて、作品的には見られたものではありません。じゃまな亭主のモーガンは都合よく死に、愛しあっているギルとルシアは結ばれるという実にありふれた作品で~す。

f:id:nostalji:20190320102709j:plain

画像は左から、ラレイン・デイ、ライオネル・バリモア、ウォーレス・ビアリーロナルド・レーガン

B西部劇シリーズ

西部劇DVDの『西部の挑戦』(1949年/監督:ウォーレス・フォックス)を観る。ダンカン・レナルドとレオ・キャリロのコンビによる“シスコ・キッド”シリーズの1本です。
シスコ・キッド(ダンカン・レナルド)と相棒のパンチョ(レオ・キャリロ)は、兵隊が強盗団を追っているのを目撃します。兵隊に殺された強盗のひとりがメキシコ人に変装した白人だったことから、シスコは情報をさぐるべく兵隊の駐屯地へ。荒馬を調教して兵隊と仲良くなりますが、隊長にメキシコ強盗団のボスと間違われ逃走。強盗団のボスが白人のピート・ハーマンと知ったシスコは、彼に近づきますが……
O・ヘンリーが創造したシスコ・キッドは、最初のトーキー映画『懐かしのアリゾナ』の主人公として栄誉を担っています。主演のワーナー・バクスターアカデミー賞受賞。以来シスコ・キッドは、ワーナー・バクスター→シーザー・ロメロ→ダンカン・レナルド→ギルバート・ローランド→再びダンカン・レナルドと主演者を変えて何本も製作されています。本作は、再登場したダンカン・レナルドが主演したシリーズの1本です。複雑な心理描写はなく、子供しか喜ばないようなレオ・キャリロの単純なギャグと、アクションが中心の少年観客向き作られています。テレビが普及すると、スクリーンからブラウン管のシリーズへ移行。私がシスコ・キッドを知ったのもテレビシリーズで~す。
懐かしのテレビ西部劇『シスコ・キッド』はここへ⇒https://88231948.at.webry.info/201509/article_2.html

f:id:nostalji:20190320071012j:plain



続いて

西部劇DVDの『峡谷の黒幕』を観る。ゼーン・グレイ原作の劇場未公開のB級西部劇です。
父が死んで故郷に戻って来たマービン(ティム・ホルト)は、自分の生まれ育った牧場が税金の滞納で差し押さえになることを知ります。金を工面したマービンでしたが、保安官と結託した酒場オーナーのカーソン(ハリー・ウッズ)はマービンの牧場を狙っており、父の代から因縁のある隣地のジョース兄弟をたきつけてマービンを殺そうとしますが失敗。兄弟の姉エリー(マーサー・ハイヤー)はマービンと親しくなり、チックとリーの兄弟も打ち解けてきます。ダム建設で土地が豊かになることを知ったチックがカーソンに殺され、保安官はマービンを犯人として捕まえようとしますが……
主演のティム・ホルトは、ジョン・フォードの『駅馬車』(騎兵隊将校役)や『荒野の決闘』(ヴァージル・アープ役)に出演していますが、数多くのB西部劇に主演したB西部劇スターといえます。1941年から43年まで、ウエスタン・マネー・メーカーのトップテンに名を連ねているんですよ。昨日の『殴り込み牧場』と同じような設定で、かわりばえしない内容。テレビが普及する前は、B西部劇が滅多矢鱈と製作され、早い話が粗製乱造で~す。

f:id:nostalji:20190319104914j:plain

先日日記で紹介した『ジャイアント台風』を加筆修正して、懐古趣味ブログへアップ⇒https://88231948.at.webry.info/201903/article_1.html



B級西部劇スター

西部劇DVDの『巨盗団殲滅』(1932年/監督:D・ロス・レダーマン)を観る。悪徳銀行家に牧場を奪われた男の孤軍奮闘の戦いを描いた物語です。
牧場主のティム(ティム・マッコイ)は、銀行家のラッセル(ウィラー・オークマン)から借りた金が返せず、牧場を奪われます。恋人のベティ(アリス・デイ)や牧童のデューク(ジョン・ウェイン)とも別れ、牧場を買い戻す資金稼ぎに出発。銀鉱を見つけたティムは、ラッセルがさしむけた殺し屋を倒して戻ってきますが、ラッセル配下の保安官助手(ウォルター・ブレナン)に殺人犯として捕らえられ……
主演のティム・マッコイは、1926年にMGMで西部劇スターとなり、33年にコロムビアに移籍。数多くのB西部劇で人気を集めました。ジョン・ウェインは主人公の親友役ですが顔を見せるだけの端役。この後ウェインは、『駅馬車』でA級スターになるまで、数多くのB級西部劇に主演します。アクションも少なく、出来の悪い作品ですが、ウェインとウォルター・ブレナンを見ただけで是としましょう。

f:id:nostalji:20190319104741j:plain