清順関連で

BSプレミアムが12日(金)に『東京流れ者』(1966年/監督:鈴木清順)を放映予定。前年に竹越ひろ子が歌う「東京流れもの」がヒットし、それに合わせて企画。渡哲也が別歌詞バージョンの主題歌を歌ってヒットしており、それにのせて演出した異色作で、清順独特の色彩感覚と幾何学的構図によるミュージカル・アクションとでも呼ぶべき奇妙な作品で~す。
画像は、竹越ひろ子のレコードジャケット。

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「東京流れもの」は、作曲者不詳のまま、思い思いの詞で、巷で歌いつがれてきた歌です。「夢は夜ひらく」や「網走番外地」と同じようなものね。作曲者不詳の曲というのは、どこか頽廃的なところがあって、哀愁を感じさせます。それと覚えやすいメロディなので、一度聴いただけで口ずさめるんですよ。本来は男の歌なんですが、竹越ひろ子は伝法風な唱法で聴く者を惹きつけました。
♪~流れ流れて東京を、そぞろ歩きは軟派でも、心にゃ硬派の血が通う、花の一匹、人生だ、ああ、東京流れもの~
ちなみに渡哲也バージョンは、
♪~何処で生きても流れ者、どうせさすらいひとり身の、明日は何処やら風に聞け、可愛いあのの娘の胸に聞け、ああ、東京流れ者
作詞は、竹越バージョンが永井ひろし、渡バージョンが川内和子(映画『東京流れ者』の脚本を書いた川内康範の別ペンネーム)で~す。


清順作品ということで

録画していた未見の『けんかえれじい』(1966年/監督:鈴木清順)を観る。喧嘩にあけくれる若者の青春物語です。
時代は昭和10年代のはじめ、岡山中学の南部麒六(高橋英樹)は“喧嘩キロク”として有名な存在。キロクは喧嘩のコツを教えてもらった先輩スッポン(川津祐介)の勧めでOSMS団に入ります。OSMS団は岡山中学5年生タクアン(片岡光雄)を団長とするガリガリの硬派集団。OSMS団と関中のカッパ団との喧嘩でキロクは大暴れし、副団長になります。しかし、反逆精神のほとばしるまま、軍事教練の時間に陸軍将校の教官(佐野浅雄)にたてつき、憲兵隊ににらまれて親戚のいる福島の喜多方中学へ転校。そこでも、喜多方中のライバルである会津若松の硬派集団・昭和白虎隊と喧嘩になり……
キロクの喧嘩好きは、ありあまる性欲の吐け口に困っているからなんですな。下宿先の娘・道子(浅野順子)が好きなんですが、指一本触れるどころか、まともに口もきけず悶々としています。敬虔なクリスチャンである道子は、野蛮なキロクには情操教育が必要と、部屋に引き入れてキロクにピアノの練習をさせる始末。キロクはというと、息子が勃起してくると彼女がいないのを見はからって、ピアノのキーを息子でポンポン演奏。若者のセックスの悩みのユーモラスな表現、それを喧嘩で発散させる痛快さを詩情豊かに描いています。226事件の北一輝との遭遇で、右翼的情念への痛切な憧憬に変わるラストの転調は見事。あの時代なりの苦痛とロマンチシズムは清順自身の青春像のような気がしま~す。

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完結編ということで

録画していた『メイズ・ランナー:最期の迷宮』(2018年/監督:ウェス・ボール)を観る。巨大迷路に放りこまれた若者たちのサバイバルを描く三部作の最終です。
巨大迷路や砂漠の迷宮を生き延びてきたトーマス(ディラン・オブライエン)と仲間たちは、秘密組織WCKD(ウィケッド)に捕まったミンホ(キー・ホン・リー)を救出すべく、彼の乗った列車を襲撃しますが失敗。ラスト・シティと呼ばれる隔離地域に連れてこられたミンホは、WCKDに寝返ったテレサ(カヤ・スコデラーリオ)によって、強力なウィルス“フレア”の抗体開発のための実験台にされます。トーマスはミンホ救出のために、ニュート(トーマス・ブロディ・サングスター)やフライパン(デクスター・ダーデン)たちとラスト・シティに向かいますが……
ウィルス“フレア”で人類はゾンビ化しており、12歳から18歳の中にウィルスへの免疫を持った若者がいて、WCKDはワクチンを作ろうとしているのが前作でわかりますが、それは自分たちだけが生き残るためだったのね。ウィルスに感染している人たち、WCKDと戦うレジスタンス組織など話を広げ過ぎた分、若者たちの友情と絆のテーマが希薄になりました。アクションシーンを多くした分、サスペンス性が薄れ、第1部の面白さに比べ、全体としては不出来で~す。

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続編ということで

録画していた『銀魂2 掟は破るためにこそある』(2018年/監督:福田雄一)を観る。空知英秋ギャグマンガを実写映画化したSF時代劇コメディの第2作目です。
宇宙からやって来た天人(アマント)が実権を握り、高層ビルが立ち並び、空には宇宙船が行き交う江戸時代末期、かつて白夜叉と恐れられた元攘夷志士の坂田銀時小栗旬)は、新八(菅田将暉)や神楽(橋本環奈)と万事屋(よろずや)営んでいますが、仕事もなく、お金に困る日々を送っています。仕方なくバイトを始めますが、行く先々で警察長官・松平片栗虎(堤真一)とお忍びで町歩きしている将軍・茂茂(勝地涼)と遭遇。同じ頃、真選組では伊東鴨太郎(三浦春馬)が近藤勲中村勘九郎)の暗殺を企てており、副長の土方十四郎柳楽優弥)は秘密兵器によりヘタレおたく化します。鴨太郎の背後にはテロリストの高杉晋助堂本剛)が暗躍しており、殺し屋・川上万斎(窪田正孝)は高杉の指令を受け……
犬猿の仲である土方から近藤を守るように頼まれた銀時が、背後にある将軍暗殺の陰謀を防ぐ物語で、しょうもないパロディやギャグが満載。バカバカしくて苦笑するだけでした。少年ジャンプの読者は、バカ笑いするんだろうなァ。アクションシーンも大味な作りで、派手にすればいいってもんじゃないでしょう。もっと殺陣の面白さを出して欲しかったで~す。

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旧い歌だが

CDを聴きながら、あれこれ文献チェック。テレビ創生期の想い出を、『ノスタルジック・ワールド』としてHP公開していたのですが、更新もままならず閉鎖したら再開希望のメールがあって、私の記憶にある番組をテレビ開局から順番にシコシコ既存のブログ『懐古趣味』にアップしているところです。『懐古趣味ウエブリブログ』はここへ⇒https://88231948.at.webry.info/
画像は、李香蘭山口淑子)全曲集『』のCDジャケット。2018年は日本におけるレコード産業90年の記念の年で、SPレコード時代に活躍し貢献のあった歌手たちの功績を届けるためにCD集がビクターから発売されました。これは、その一つ。日本人でありながら、中国人として1933年に歌手デビュー。映画スターとしても大人気となりました。彼女の代表曲「蘇州夜曲」は、『支那の夜』(1940年/監督:伏水修)の主題歌で、劇中で歌って大ヒット。当時のキネマ旬報には、「満州生粋の絶世美人スターとして全満の人気を独占している李香蘭が、長谷川一夫の相手役として登場……芳紀正に二十歳、嘗て全満に号令した奉天市長を父に持つ名門の出、長じて北京の日本人学校に学んだため、日本語も流暢」と紹介されています。
作曲家の服部良一は、「中国女性が、日本語で映画の主題歌を歌う!」を真に受け、中国の美しい山河、すすり泣くような胡弓の音などを心によみがえさせながら、屈指のラブソング書き上げました。生涯に3千曲以上作曲している服部良一の最も気に入った曲は「蘇州夜曲」だったんですよ。

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♪~君がみ胸に、抱かれて聞くは、夢の船唄、鳥の唄。水の蘇州の、花散る春を、惜しむか柳が、すすり泣く~
東洋のベニスと云われる蘇州ですが、30年前に訪問した時は、唄のような風情はなく、運河の水は茶色く濁り、異臭も放っていました。現在は、かなり改善されたようですけどね。


またしても最低

録画していた『ジュラシック・エクスペディション』を観る。人類と恐竜の生き残りをかけた戦いを描く劇場未公開のSFアドベンチャーです。
宇宙探査船が人類が生存できる可能性をしめす惑星を発見。メイソン少佐率いる6人の調査隊が地上に降りますが、未知のモンスターが彼らを襲います。メイソンは犠牲を出しながら調査を続けますが……
“ジュラシック”とついているB級映画にろくなものはないんですが、これも予想通り酷い作品。大気の成分を調べずに、宇宙服なしで地上に降り立つのはこの手の作品では常識なので許しましょう。彼らの前に“トレマーズ”のような巨大地中生物が出現。しかし、その後の展開では一度も姿を現しません。“何じゃコリャ”ですよ。隊員のひとりは、ナイフで遊んでいて指を斬り、その辺の水溜まり傷を洗って奇病にかかり自殺。恐竜がなかなか出てこないと思ったら、“プレデター”のように周囲に溶け込んで、姿を隠して行動するステルス型恐竜だったんですね。造形はエリマキトカゲを大きくしたようなもの。襲ってくる気配がないのに、アホ隊員が銃撃したものだから襲われるはめになります。残ったのはメイソンと女性アンドロイドだけ。利用可能資源があるってんで、二人だけで調査を続け、恐竜の大群に襲われてエンド。考えるのが面倒くさくなって、投げ出したような終わり方で~す。

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ディズニーでなく

録画していた『アラジン~新たなる冒険~』(2015年/監督:アルトゥール・バンザカン)を観る。劇場未公開のフランス製ファンタジーコメディです。
クリスマス・イブの夜、サム(ケヴ・アダムズ)はサンタのバイトを利用してデパートから宝石を盗もうとしますが、子供たちが集まってきてアラジンの物語をするはめになります。カリド(ウィリアム・レブギル)とインチキ薬を売っていたアラジン(ケヴ・アダムズの二役)は、政略結婚を嫌がって宮殿から抜け出してきた王女(ヴァネッサ・ギード)に一目惚れ。王女を捜しにきた悪大臣(ジャン・ポール・ルーヴ)に捕まり砂漠に追放されます。宝物を探している老人に救われ、危険な洞窟で魔法のランプを発見。ランプの精ジーン(エリック・ジュドール)が出現し、願いを叶えてくれますが……
子供たちにツッ込まれて話をどんどん変えていくのが味素。“魔法の絨毯”なんか、安っぽいVFXですが、わざとそうしているのかも。デパートの店員に「VFXは嫌いだ」なんて言わしていますからね。しょうもないパロディやギャグが満載で、半分バカにしながら笑って観ていましたが、嫌いじゃないです。フランス人好みの笑いなのか、18年に続編も作られていま~す。

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