善いインディアンの代表

西部劇パーフェクトコレクションに収録されている『酋長コチース』(1953年/監督:ウィリアム・キャッスル)を観る。白人との和平の道を求めるアパッチの酋長コチースの物語です。
米墨戦争後、アリゾナのツーソン一帯はアメリカ領となり、治安管理のためにバーク大佐(ロバート・スタック)が派遣されます。それまで、メキシコ人と対立していたアパッチやコマンチのインディアンは、今度は白人と対立。故郷に帰るメキシコ貴族が多い中、アパッチに妻を殺されたフィリッペ(リコ・アロンゾ)はツーソンに残り、悪徳商人マドック(ロバート・グリフィン)にそそのかされてアパッチの酋長コチース(ジョン・ホディアク)の命を狙います。コチースはアメリカ軍との戦いを避けるためバーク大佐と協定を結びますが、コマンチ族が協定を破ったために……
コチースは実在の人物で、『折れた矢』(1950年/監督:デルマー・デイビス)でも平和を愛する良識ある酋長として描かれていましたな。ジェロニモと違って、悪いインディアンとして描かれることはありません。この作品でも、愛する妻を殺されても復讐よりも平和の道を選んだり、コマンチに襲われているメキシコ貴族の娘(ジョイ・ペイジ)を救ったりと、同胞よりも協定遵守。白人御都合主義のコチース像ね。戦闘シーンは迫力不足で物足らなさがあり、出来としては今イチで~す。

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画像は、ジョン・ホディアクとロバート・スタックロバート・スタックは、後年テレビドラマ『アンタッチャブル』のエリオット・ネス役で日本でも知られるようになりましたね。
明日から佐渡に旅行しますので、7日まで日記は休みます。

歌うカウボーイ

西部劇パーフェクトコレクションに収録されているレックス・アレン主演の『荒野のカウボーイ』(1950年/監督:R・G・スプリングスティーン)を観る。レックス・アレンの歌は聴いたことがあるのですが、映画で見るのは初めて。シンギング・カウボーイの西部劇は全くといって日本公開されておらず、当然これも未公開。シンギング・カウボーイの定番通り、レックス・アレンは役名も同じレックス・アレンで、腰に拳銃をつけ、くり毛の愛馬ココ(シンギング・カウボーイは必ず愛馬がセット)に跨り、劇中で歌を歌います。
牛の買い付け業者スティーブンスの横暴な要求にレックス・アレンは牧場主たちと結束して組合を結成。レックスは新たな買い付け業者を見つけ、スティーブンスの鉄道(引込み線)を使わずに、本線が通っている町まで牛を運ぶことにしますが、スティーブンス一味が様々な妨害をしてきます。時代は開拓時代にあらずして、現代(1950年当時)の西部。町にはビルが建ち、自動車が走っており、悪党は低空飛行の爆音でキャトルドライブ中の牛の大群を暴走させます。
レックス・アレンは、20歳の時(1942年)にカントリー・ウエスタン歌手としてデビュー。高校時代にはロデオ大会に出場したこともあります。46年にはジーン・オートリーと一緒にラジオ・ショーに出演。その後、めきめき人気をあげ、49年にリパブリックと契約し、シンギング・カウボーイとしてデビュー。ロイ・ロジャース、ジーン・オートリーに次ぐシンギング・カウボーイの人気スターとなります。社会全体が近代化していく中で、シンギング・カウボーイはアナクロになって存在感を失い、レックス・アレンがシンギング・カウボーイとして活躍するのは、50年代前半までのわずか5年。このことから、最後のシンギング・カウボーイと云われていま~す。

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画像は、レックス・アレンと愛馬ココ。ココも出演者としてクレジットされています。

海外ドラマから

WOWOWで放送している『ブラインドスポット4』を観了。
シーズン1は、タイムズスクエアに置かれたバッグの中から全身にさまざまなタトゥーが彫られた記憶喪失の女性ジェーン(ジェイミー・アレクサンダー)が現れ、FBIのカート(サリヴァン・ステイプルトン)を相棒に、タトゥーを手掛かりに1話完結の事件解決があり、並行してタトゥーの謎、ジェーンの正体が断片的に明かされていきました。
シーズン2は、ジェーンの正体がわかり、記憶も甦ります。そして、ジェーンはカートとともに自分をFBIに送り込んだテロ組織サンドストームと対決。
シーズン3は、ジェーンの身体から新たなタトゥーが見つかり、サンドストームの黒幕というべき組織HCIグローバルと対決。記憶をなくす薬(シーズン1の記憶喪失はこの薬によるもの)の副作用でシーズン1から3までの記憶がなくなり、サンドストーム時代の記憶だけが蘇ります。
シーズン4は、記憶をなくす薬の副作用によって余命残りわずかとなったジェーンの治療薬探しと、HCIグローバルの後継者となったマデリン(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)との対決。ジェーンは完全治癒しますが、マデリンの罠によってジェーンたちFBIメンバーはテロリストにされます。無人機攻撃によって隠れ家が爆破され、外にいたジェーンは助かりますが、仲間のカート、リード(ロブ・ブラウン)、ザパタ(オードり-・エスパーザ)、パターソン(アシュレー・ジョンソン)は果たして……
何度も打切りが出ては更新してきた『ブラインドスポット』ですが、シーズン5が最終となるようです。隠れ家にいた仲間は、おそらく地下に避難しているでしょう。更新のたびに、前シーズンと関連する新しい設定が必要となり、こじつけが多くみられましたが、それもまた楽しで~す。

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今度は悪役

西部劇パーフェクトコレクションに収録されている『サンアントニオの復讐』(1953年/監督:ジョセフ・ケイン)を観る。牛を輸送してメキシコ革命軍に協力する男を描いた日本未公開作品です。
南北戦争が始まり、民間人のカール(ロッド・キャメロン)は南軍の大佐としてテキサスの牛を運ぶことになります。しかし、途中で北軍待ち伏せされ、テキサスの大荘園の娘ジュリア(アーリン・ウェラン)をめぐってカールと敵対していたカルバー中尉(フォレスト・タッカー)が仲間を裏切って逃走。カールたちは全員捕虜になり終戦を迎えます。故郷に帰ったカールを待っていたのはメキシコ娘のマニナ(ケティ・フラド)。マニナの兄チノはメキシコ革命軍の隊長で、革命軍の捕虜になっているテキサス人50人との交換を条件に、食料不足の革命軍のために牛500頭をメキシコへ運びますが……
全てのトラブルが性悪女のジュリアに起因して展開するので、お話がスッキリしません。ジュリア役のアーリン・ウェランが今イチ魅力ないので翻弄される男たちがバカみたい。北軍やアパッチとの銃撃戦はありますが、見せ場はロッド・キャメロンとフォレスト・タッカーの殴り合いね。二人の格闘シーンに始まって、二人の格闘シーンで終わります。キャトルドライブでロッド・キャメロンと行動を共にする仲間の役で、ボブ・スティールとハリー・ケリー・ジュニアが出演。冒頭のジュリアの屋敷でのパーティー・シーンに、『ララミー牧場』のロバート・フラーがエキストラでチラッと顔を見せていたのが、この映画での収穫で~す。

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もっと西部劇

西部劇パーフェクトコレクションに収録されている『流れ者の復讐』(1950年/監督:ジョセフ・ケイン)を観る。酒場の共同経営者がひとりの女性をめぐって対立するB級西部劇です。
ベス(アデル・マーラ)は、弟のトミーとカリフォルニアに向かう途中でインディアンに襲われて、マイク(フォレスト・タッカー)という男に助けられます。マイクはカリフォルニアのコースゴールドに酒場を持っていますが、共同経営しているリンク(ジム・デイビス)は借金を抱えた駅馬車強盗の常習犯。襲った駅馬車に兄のボブ(ビル・ウィリアムス)を訪ねるベスが乗っていてリンクは一目惚れ。ベスの兄ボブは乱暴者で、マイクを殺そうとして逆に殺されており、マイクもベスに惹かれていることを知ったリンクは、ベスにそのことを告げます。一時はマイクを恨んだベスですが、非が兄にあることを知り、マイクと仲直り。しかし、仲直りの記念にリンクがマイクにプレゼントしたタイピンが駅馬車強盗の証拠品だったことから、マイクは駅馬車強盗に間違われて保安官(チャールズ・ケンパー)に追われ……
流れ者も復讐もない適当な題名です。お話も適当なところがありますが、この手の作品としては、まともなほうでしょう。主演のフォレスト・タッカーは良い役も悪い役もこなせる西部劇には欠かせぬ存在。大柄なので格闘シーンは見せ場になりますね。相手役のアデラ・マーラは初めて見る顔。フィルモグラフィーによるとB級作品ばかりで、50年代までの女優のようで~す。

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作品的価値なし

友人から『デッドウッド~決戦のワイルドタウン~』(2019年/監督:ダニエル・ミナハン)が送られてきた。『デッドウッド』は、2004年~2006年にかけて3シーズン(全36話)放送されたテレビ西部劇で、これは続編にあたるテレビムーヴィ。
1889年、州昇格を祝うサウスダコタ州デッドウッドの町にカラミティ・ジェーン(ロビン・ワイガート)が10年ぶりに帰ってきます。無法の町デッドウッドにも時代の変化が訪れ、かつては血なまぐさい抗争を繰り広げていた酒場の主人アル(イアン・マクシェーン)や保安官のセス(ティモシー・オリファント)も穏やかな日常。しかし、政治家として名をあげたハースト(ジェラルド・マクレイニー)が再び現れ、チャーリー・アター(デイトン・カリー)の土地を買収しようとしたことから……
テレビシリーズはデッドウッドという町が主役で、主要人物が多岐にわたる集団ドラマでした。それをそのままテレビムーヴィにしたものだから、テレビシリーズを観ていない人にとっては中身の薄いつまらない作品だと思います。次々に登場する人物の過去の出来事やキャラを知っていないと、楽しめないんですよ。カラミティ・ジェーン、アル・スウェレンジン、セス・ブロックと彼の相棒ソル・スター(ジョン・ホークス)、ジョージ・ハースト、チャーリー・アターは実在の人物ですが、史実との連動がなくて面白くありません。テレビシリーズの打切りを惜しんだカルトなファンのための同窓会映画で~す。

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画像は、セス・ブロック(ティモシー・オリファント)とソル・スター(ジョン・ホークス
ちなみに、テレビシリーズについてはココヘ⇒http://www2u.biglobe.ne.jp/~kazu60/kaita1/dwood.htm 

生アクションはタイ映画

録画していた『チョコレート・ファイター』(2008年/監督:ブラッチャヤ-・ピンゲイド)を観る。自閉症の女の子が悪党たちをなぎ倒す痛快格闘アクションです。
日本人のヤクザの父マサシ(阿部寛)とタイ・マフィアの女だった母ジン(アマラー・シリポン)との間に生まれた娘ゼン(ジージャー)はマーブルチョコレートと格闘動画が好きな自閉症の女の子。だけど、格闘の動きを瞬時に覚える能力と驚異的な身体能力(ポパイのホウレン草のようにチョコレートを食べると強くなるわけじゃないよ)を備えています。マサシと別れる条件で組織に許されたジンでしたが、白血病になり、多額の治療費が必要となり、ゼンの幼馴染で面倒もみているムン(タポン・ポップワンディー)がジンの帳簿を見つけ、借金の取り立てを計画。ジンが金を貸している人々を訪ねて借金を回収しますが、彼らが組織の人物だったことから……
『マッハ』の監督ブラッチャヤ-・ピンゲイドが、4年の歳月をかけて基礎から育て上げたというだけあってジージャーのアクションには目をみはるものがあります。『マッハ』のトニー・ジャーと比べると迫力は不足していますが、アクロバティックな動きは魅力満点。ジャッキー・チェンの映画でお馴染みのNGシーンがエンドロールにあるのですが、そこまでやるかというくらいのケガ人続出のスタントね。スタントの過激さでは香港映画を超えていますな。嫌がらせをするチンピラをブチのめし、借金を返さない連中をなぎ倒し、最後は刀まで使っての組織との対決と、格闘するためだけのストーリーで、物語に深みはありませんが、格闘アクション好きなら必見で~す。

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