懐かしのお色気青春映画

録画していた『青い体験』(1973年/監督:サルヴァトーレ・サンペリ)を観る。思春期の少年が色気ムンムンの年上女性に対して性の悩みを抱えることになるコミカル青春ラブロマンス。

妻に先だたれたイグナツィオ(テューリ・フェッロ)の家に、若くて美しい家政婦アンジェラ(ラウラ・アントネッリ)がやって来ます。優しい笑顔でかいがいしく家事をこなすアンジェラ。イグナツィオには3人の息子がいて、特に次男の高校生ニーノ(アレッサンドロ・モモ)は彼女に対して強い憧れと反発心が入り混じった複雑な感情を抱きます。ニーノの友人の姉(ティナ・オーモン)や、父の顧客である未亡人(アンジェラ・ルーチェ)がニーノを誘惑しますが、彼の心にあるのはアンジェラだけ。父がアンジェラに熱をあげて彼女と再婚する決意をしたことから……

ニーノはアンジェラに色々嫌がらせをするのですが、手を出す勇気はなく、業を煮やしたアンジェラが無理やりニーノを筆おろし。そして、知らぬ顔してイグナツィオと結婚。アンジェラの性格が今イチ不明確なので、コメディとして中途半端なものになっていま~す。

 

続いて

DVDで『ジンギス・カン』(1965年/監督:ヘンリー・レヴィン)を観る。劇場でリアルタイムで観て以来の再見です。

メルキト族のジャムカ(スティーブン・ボイド)に父を殺され、捕虜となって奴隷のような生活をしていたテムジン(オマー・シャリフ)は、水に落ちたジャムカの婚約者ボルテ(フランソワーズ・ドルレアック)を救い、互いに惹かれあいます。ある日、占星術師ギーン(マイケル・ホーダン)・怪力奴隷センガル(ウディ・ストロード)と脱走。捕虜となっていたシャン(テリー・サバラス)たちサルキト族の戦士を救い出して配下にします。奴隷商人の隊商を襲って、奴隷を解放し、モンゴル国家の建設を決意。メルキトの集落を奇襲して、ボルテを拉致し、妻にします。メルキトの追跡を逃れて東へ向かっていたテムジンたちは、中国の要人カム・リン(ジェームズ・メイソン)を助け、北京に入城。金国皇帝(ロバート・モーレイ)の信頼を得て、兵力を増強。侵攻してきた満州族を撃破し、満州族と同盟していたジャムカを捕えます。テムジンを警戒した皇帝は、ジャムカを使ってテムジンの暗殺を計画。そのことをカム・リンから知らされたテムジンは、戦勝祝いの花火を利用して城門を爆破し、部隊を率いてモンゴルに戻ります。ジャムカも、その混乱を利用して逃走。カム・リンの進言で、金国を滅ぼしたテムジンのもとにメルキトを除くモンゴルの全部族が結集。西へ向けて進撃を開始します。ジャムカはホラズム王(イーライ・ウォラック)に取り入り、テムジンとの最終決戦へ。テムジンはホラズム・メルキト連合軍を破り、ジャムカを決闘で倒し、メルキト族も加わってモンゴルの統合をはたすのです。

ジンギスカンの生涯に焦点を絞っていますが、ハリウッド映画らしく史実とは大きくかけ離れ、最初から最後までテムジンとジャムカの対立という構図。アラブ顔のオマー・シャリフよりもスティーブン・ボイドの方が蒙古人の雰囲気があり、存在感が大きいです。ユーゴスラビアでロケしているので、『征服者』よりアジアの大平原での戦いになっていますな。デュッシャン・ラディックの音楽も東洋的な旋律を織り込み、悪くありません。だけど、騎馬合戦は『征服者』に劣りま~す。

 

陳腐だが

DVDで『征服者』(1955年/監督:ディック・パウエル)を観る。ジョン・ウェインジンギスカンを演じた歴史アクション。

ゴビ草原で多くの民族が勢力を争っていた12世紀。モンゴルの熱血児テムジン(ジョン・ウェイン)は、義兄弟ジャムガ(ペドロ・アルメンダリス)と鷹狩りの途中、タタール王女ボルテ(スーザン・ヘイワード)の嫁入り行列を見つけます。タタール王に父親を殺された恨みを持つテムジンは、一族を率いて行列を襲い、ボルテを掠奪。母(アグネス・ムーアヘッド)の反対にも拘わらず、テムジンはボルテを妻にすると宣言。ボルテと結婚するはずだったメルキト族の族長がテムジンの集落を襲いますが、返り討ちにあいます。タタール征服のため、テムジンは内蒙古の支配者ワン・カーン(トーマス・ゴメス)との同盟を計画。テムジンはボルテを連れて、遊興にふけるワン・カーンに謁見。側近の占い師シャーマン(ジョン・ホイト)の勧めでワン・カーンは同盟を承諾。帰路についたテムジンはタタール軍に襲われ捕えられます。タタール王クムレク(テッド・デ・コルシア)の拷問をうけますが、ボルテの助けで脱出に成功。テムジンは兵を集め、ワン・カーンの兵を待ちますが、ワン・カーンはテムジンがタタールに殺されたと信じて兵を出しません。そのことをシャーマンから知らされたテムジンは、シャーマンの手引きでワン・カーンの城を奇襲。カーンを倒し、カーンの兵を手中にします。兵力の整ったテムジンはタタールとの決戦へ……

ジョン・ウェインをはじめとして、配下のリー・ヴァン・クリーフたち男は皆ドジョウ髭をつけて東洋人らしくみせていますが、笑える存在です。女たちもインディアン娘を演じる白人女優と同じで、スーザン・ヘイワードはどこから見ても白人ですよ。風景も西部劇に出てくる、そのまんまの荒野。だけど、大量の馬とエキストラを使った騎馬合戦は、CGでは味わえない全盛期のハリウッドらしい迫力あるものとなっていま~す。

 

これが最初

録画していた『俺たちに明日はない』(1967年/監督:アーサー・ペン)を再見。『イージー・ライダー』に始まるニューシネマ時代の先駆けとなった最初の作品です。

1930年代初めは大恐慌が尾をひいて失業者があふれ、アメリカは荒廃が全土を覆っていました。そんな中、出所したクライド(ウォーレン・ベイティ)は自動車を盗もうとしてボニー(フェイ・ダナウェー)と遭遇。クライドとボニーは互いに惹かれあい、クライドはボニーの気の強さを、ボニーはクライドの図太さを気に入ります。二人は組んで泥棒をはじめ、犯行はことごとく成功。自動車修理を頼んだ若者モス(マイケル・J・ポラード)も現実に飽き飽きしており仲間に加わります。モスが見張りと運転、ボニーとクライドが強盗をして逃走する毎日。新聞にボニーとクライドの名が売れ、クライドの兄バック(ジーン・ハックマン)と彼の妻ブランチ(エステル・パーソンズ)も一行に加わります。ボニーとクライドの強盗団はバロウズ・ギャングとして新聞が大々的に報道。犯行を重ねる中、ボニーとブランチは事毎に対立して、結局ドジをふむハメになり、警官隊と銃撃戦となります。傷ついた兄夫婦を残して、3人はやっと逃げのび、モスの実家にたどりつきますが……

1930年代に実在したギャング、ボニーとクライドの物語。犯罪映画というより青春映画であり、実録ものというより、「むかし、むかし、こんな若者たちがいた……」という形の伝説物語。フォギー・マウンテン・ボーイズのヒット曲「フォギー・マウンテン・ブレイクダウン」の軽快なメロディーにのせて、田舎道をジグザグに走って逃げていくユーモアたっぷりの前半から、荒野でボニーが母親と別れを告げる幻想的なシーンを経て、クライドとボニーが蜂の巣のように弾丸をぶちこまれるラストのスローモーションまで、死へと魅せられていく青春を印象的に描いています。ラストのスローモーションは、サム・ペキンパーの『ワイルド・バンチ』に影響を与えたと云われていますな。

タイム誌がこの作品を“ニューシネマ”と表現したのですが、言葉として定着したのは、『イージー・ライダー』以後で~す。

 

懐かしの青春映画

録画していた『卒業』(1967年/監督:マイク・ニコルズ)を再見。ダスティン・ホフマンキャサリン・ロスが世界的に有名になった作品。

勉強もスポーツもそつなくこなして大学を卒業した真面目青年のベン(ダスティン・ホフマン)は、これから先の人生をどうして過ごすべきか、説明しえない焦燥感を抱いています。嫌がる彼を無視して両親が開いたお祝いのパーティで会った知人のロビンソン夫人(アン・バンクロフト)がベンを強烈に誘惑。彼女は強引に家まで送らせたうえ、戸惑うベンの前で衣服を脱いで挑発したんですな。ホフマン独特の演技で笑いを誘います。その夜は何事もなかったのですが、彼の方から夫人にデートを申し込み、ホテルで密会。ベンは情事の生活に生きがいを見出します。何も知らない両親は、大学から休みで帰ってきた夫人の娘エレーヌ(キャサリン・ロス)との結婚を希望。いやいやながらエレーヌとデートしたら、彼女の清純さ可憐さに、たちまち恋をします。一方、夫人は嫉妬のあまり、娘に彼と自分の関係を暴露。ショックを受けたエレーヌは、傷心を抱いて大学に戻ります。必死に跡を追うベン。ベンの一途な想いは、ついに別の男と結婚式をあげるエレーヌを式場から略奪し、人生入門を卒業。

音楽と流麗な映像が若い二人の心を表し、ユニークな青春恋物語になっています。原作はチャールズ・ウェッブの同名小説。モラトリアム感覚と既成の道徳に対する不信感。『俺たちに明日はない』と並ぶ、ニューシネマの先駆的作品です。

この映画にはサイモンとガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」「スカボロー・フェア」「ミセス・ロビンソン」の叙情的な3曲が使われていますが、この映画のために書かれたのは「ミセス・ロビンソン」だけ。主題歌の「サウンド・オブ・サイレンス」は、サイモンが1964年に作詞・作曲したもの。「スカボロー・フェア」の元はアイルランド民謡。3曲とも映像とうまく結びついて甘美な効果をあげていましたね。

 

週に一度は西部劇

録画保存していた『必殺の一弾』(1956年/監督:ラッセル・ラウズ)を再見。20年前に再見した時と感想は全く同じ。

砂漠を行く三人の無法者(ブロドリック・クロフォード、ジョン・デナー、ノア・ビアリー)のロング映像のタイトルに始まり、三人が着いたシルバーラビットの町でクロフォードが町一番の早撃ちを射殺。最初の数分を観ただけで面白さがわかる西部劇です。そして一転して、早撃ちの訓練をしているグレン・フォード。銃杷には六つの刻みがつけられており、この男の過去が尋常ではないことを一目でわからせる心憎い演出。クロスクリークの町ではクロフォードの早撃ちが話題になり、誰が西部で一番の早撃ちかと、話がはずんでいます。子供の頃から早撃ちを練習しており、誰にも負けないと自負しているフォードが我慢できなくなり、早撃ちを披露。早撃ちのことがわかると自分を狙ってやって来る早撃ち自慢に町を乱されるのでフォードは町を立ち去ろうとします。しかし、過去にもこのようなことがあり、その度に町を逃げ出す人生に嫌気をさした妻の言葉と町民の提案を信じて町に残ることを決心。ところが、そこへ銀行を襲撃して追われているクロフォードが町にやってきます。クロフォードは子供からフォードの早撃ちのことを聞き、町民を脅してフォードに挑戦。フォードが所持していた拳銃は決闘で死んだ父親の物で、フォードは実戦経験のない臆病な早撃ちガンマン。相手を殺したくなくて町を去っていたのでなく、決闘が怖くて逃げ出していたんですな。仕方なくクロフォードと戦うはめとなった決闘の結果は、墓二つ。1970年代の西部劇だったら重く暗い内容にしたでしょうが、そこは50年代の西部劇ですからラストは爽やか。

早撃ち名人の話を聞いてイライラしてきて、拳銃をつけていなくても無意識に拳銃に手をかけるような動作を見せるフォードのノイローゼ演技もさることながら、早撃ちナンバーワンにこだわるクロフォードの執念の演技も光っています。この二人の心理が、早撃ちの果たし合いという単純なテーマを深いものにしていますな。『拳銃王』への皮肉も感じられる作品で~す。

ちなみに、ラス・タンブリンが出演していますが、物語には関係なく踊りを見せるだけの存在。

 

新作時代劇なので

録画していた『三屋清左衛門残日録ー再び咲く花-』を観る。北大路欣也主演のシリーズ7作目。

三屋清左衛門(北大路欣也)は、少年たちの喧嘩の仲裁をして、柘植俊吾少年(一ノ瀬嵐)と知りあいます。俊吾の父・孫四郎(甲本雅裕)は8年前に要人・吉崎(国広富之)の護衛に失敗していらい不遇をかこっており、清左衛門は吉崎暗殺事件を調査。親友の町奉行・佐伯熊太(伊東四朗)の助力で事件の背景に派閥争いがあることがわかり……

藤沢周平の原作はシリーズ3作目で終わり、4作目からは藤沢周平の短編をもとに脚色しています。本作は、「山姥橋夜五つ」を“三屋清左衛門残日録”の登場人物に合わせて脚色。いずみ玲の脚本は見事に融合しており、サスペンスと人情味あふれる出色の出来ばえです。それにしても、7年も続くと、伊東四朗の老齢化が目立ってきましたね。