豪華キャストだが

nostalji2012-06-02

録画していた『人生劇場・飛車角と吉良常』(1968年・東映/監督:内田吐夢)を観る。尾崎士郎の原作『人生劇場・残侠編』の映画化で、63年の『人生劇場・飛車角』より原作に近いものとなっています。吉良常(辰巳柳太郎)が亡き主人・青成瓢太郎(中村竹弥)の墓を建てるために、瓢太郎の息子・瓢吉(松方弘樹)を訪ねて東京に行くところから始まります。瓢吉は留置所にいて、迎えに行った吉良常は、同じ留置所にいた小金組の宮川(高倉健)と知り合います。その頃、小金組は横浜の大横田(遠藤辰雄)の身内・丈徳一家と対立していました。大横田の遊郭から足抜けさせた飛車角(鶴田浩二)とおとよ(藤純子)を匿っていたからなんですね。小金(若山富三郎)に恩義を感じた飛車角は、宮川と丈徳一家に殴り込み、丈徳(天津敏)を殺します。しかし、留守中に飛車角の弟分・奈良平(名和宏)が裏切っておとよを連れ出しており、それを知った飛車角は奈良平を殺します。警官に追われた飛車角は瓢吉の家に逃げ込み、吉良常と知り合います。飛車角は自首して3年の歳月が流れ、その間におとよは玉ノ井の遊女になっており、飛車角の愛人とは知らずに宮川はおとよと深い仲になっているんですな。飛車角に頼まれておとよを捜していた吉良常から飛車角のことを聞いたおとよは、宮川との関係に苦しみ、遊女仲間のお袖(左幸子)と玉ノ井から逃げ出し、行方知れずとなります。恩赦で出所した飛車角は吉良常からそのことを知らされ……
男と女の恋情や任侠道の世界は内田吐夢に適した題材と思えず、映画の出来としては沢島忠の『人生劇場・飛車角』の方が良かったですね。情念といったものが不足しています。それでも、宮川を殺したデカ虎(山本麟一)に飛車角が殴り込みをかけるラストは、『宮本武蔵一乗寺の決闘』のようにカラーからモノクロに変わり、吐夢らしい迫力ある乱闘シーンだったし、大正の時代色がよく出ている映像は風格がありま〜す。