任侠路線の先駆けというだけでなく

nostalji2012-05-30

録画していた『人生劇場・飛車角』(1963年・東映/監督:沢島忠)を観る。原作は尾崎士郎の何度も映画化された名作ですが、青成瓢吉でなく主人公を飛車角にした初めての作品です。愛人のおとよ(佐久間良子)を足抜きさせて小金一家の世話になった飛車角(鶴田浩二)が、その恩義に報いるため小金一家と敵対関係にある丈徳一家に殴り込み、丈徳を殺すんですな。警官に追われた飛車角は老侠客の吉良常(月形龍之介)と知り合い、任侠の深い絆を持ちます。飛車角は自首して3年の刑期をつとめるんですが、その間に小金親分は弟分の奈良平(水島道太郎)に殺され、それを目撃したおとよは奈良平に狙われます。飛車角と一緒に丈徳一家に殴り込みをして逃亡中だった宮川(高倉健)がおとよを助け、おとよが飛車角の愛人ということを知らずに宮川はおとよと愛しあうようになります。出所した飛車角は吉良常からそのことを知らされ……
原作を大幅に変え、股旅映画のパターンを大正時代の着流しヤクザに置き換え、新しいチャンバラ劇にした作品です。情念あふれる演技もさることながら、鶴田浩二が持つ役者としてのキャラがマッチし、その後の東映任侠路線の看板スターとなりました。それと、佐久間良子が演技開眼した作品でもあります。お嬢様やお姫様という平凡な役ばかりだった彼女の初めての汚れ役です。殴り込みに行く飛車角を止めようとする女の情愛は最高。この作品があって、彼女の代表作『五番町夕霧楼』につながるんですね。月形龍之介の吉良常もよく、だまって立っているだけでも風格がにじみ出ています。沢島忠の作品で5本の指に入る傑作で〜す。