異色な主人公

nostalji2012-11-04

録画していた『狼よ落日を斬れ』(1974年・松竹/監督:三隅研次)を観る。杉虎之助(高橋英樹)は子どもの頃、継母にいじめられて投身自殺するのですが、池本茂兵衛(田村高広)という幕府隠密に助けられます。茂兵衛に剣を学びながら育ち、凄腕の剣客になるのね。時代は幕末で、伊庭八郎(近藤正臣)、沖田総司西郷輝彦)、中村半次郎緒形拳)といった実在の剣客と親交を結びます。恩師である茂兵衛は薩摩の刺客に殺され、伊庭八郎、沖田総司も死に、剣を捨てて床屋になるのね。茂兵衛を斬ったのが中村半次郎と知った虎之助は、西郷隆盛辰巳柳太郎)ともに鹿児島に帰った半次郎と対決しますが、斬りあいに空しさを感じ、刀をおさめます。半次郎は西南戦争で戦死し、虎之助だけが生き残るのですが、死んでいった者の方に美学を感じるんですよ。
作品的には全体的に統一感がなく、やたら長い(160分)だけの誉められたものではありませんが、殺陣だけはよかったです。茂兵衛が4人の敵を一瞬に斬り倒すシーン、茂兵衛が真剣で虎之助に稽古をつけるシーン、虎之助と伊庭八郎が真剣で手合わせするシーン、沖田総司が三段突きで敵を斬りふせるシーンなど見応えがあります。三隅研次の特長が出ていました。妻(松坂慶子)を殺した下手人(藤岡重慶)を虎之助が真っ二つにするのは、血みどろスプラッターで笑ってしまいましたけどね。ちなみに、この作品は三隅研次の遺作で〜す。