メリエスとSF映画

nostalji2013-02-26

録画していた『メリエスの素晴らしき映画魔術』と『月世界旅行(カラー版)』を観る。『メリエスの素晴らしき映画魔術』は、ジョルジュ・メリエスの成功と挫折の人生を追うドキュメンタリーです。1895年、初めて見たシネマトグラフに魅了されたメリエスはカメラを買い、映画作りを始めます。最初はリュミエールと同様にドキュメンタリーが主でしたが、撮影中にフィルムがひっかかり、撮影を中断して修理し、再び撮影したフィルムを現像したところ、乗り合い馬車が途中で葬式馬車に変わっていたんですね。これにヒントを得たメリエスは、以後、トリックを駆使して多くの作品を作っていきます。椅子に座っている婦人に布をかぶせ、布をとると骸骨に変わっているという作品や、台の上に置かれた首に空気を入れるとどんどん大きくなり最後に破裂するといった作品で、ミニチュア、オーバーラップ、カメラの位置移動などの他愛ないトリックですが、当時の観客には大ウケでした。そして、1902年に世界で最初の本格SF映画『月世界旅行』を作ります。
月世界旅行』は、6人の科学者が砲弾ロケット(大砲で月に向けて発射するのね)で月に行き、月人間に襲われ、ロケットで逃げ帰ってくるだけの15分の短い作品ですが、H・G・ウェルズの『月世界最初の人間』とジュール・ヴェルヌの『地球から月まで』からアイデアを頂いているんですね。出発の時に、太腿まるだしの女性たち(ミュージック・ホールの女優のようだ)のお色気サービスや、月が擬人化され、月の右目にロケットが突っ込んで血の涙を流すなど、現代の感覚からするとウ〜ンというような内容ですが、当時の観客にはこの奇想天外が大ウケしました。当時は、上映権を売買するのでなくフィルムそのものを売買していたようで、付加価値を高めるためにフィルムに彩色したカラー作品もあったんですよ。今回観たのがそれで、スペインで見つかったものを補修したものでした。
奇抜な内容で人気をはくしたメリエスでしたが、1905年頃から飽きられはじめ、1912年にメリエスの映画会社は倒産します。メリエス作品に映画の芸術性はありませんが、数々の映画の持つトリックを創案し、映画の楽しさを提供した功績は大きいと思いま〜す。