三国さん関連で

nostalji2013-04-17

録画保存していた時代劇映画『真剣勝負』(1971年・東宝/監督:内田吐夢)を観る。東映五部作では描かれなかった宮本武蔵と宍戸梅軒の対決を、武蔵が梅軒の家を訪ねる夕刻から翌日の夕刻までの丸1日をセミドキュメンタリータッチで描いた野心作です。
武蔵(中村錦之助)は、八重垣流の鎖鎌の妙手を見るために鈴鹿山地の枯野にある梅軒(三国連太郎)の一軒家を訪ねます。酒をくみかわしながらの昔話の中で、梅軒は武蔵が関ケ原で女房お槇(沖山秀子)の兄・辻風典馬を殺した男と気づくのね。三国さんならではの見えない殺気が漂います。お槇が梅軒の手下8人を呼び寄せ、寝ている武蔵を襲おうとしますが、武蔵は風車によって気配を察知。寝床を出た武蔵は一人を斬り伏せると、草原に駆け出し、分散した相手を一人ずつ倒していきます。そして、梅軒・お槇の二人との対決。お槇も鎖鎌の達人で、形勢不利とみた武蔵は二人の赤ん坊を人質にとるのね。三人は対時したまま時間がすぎ、空腹に赤ん坊が泣きだします。子どもに乳を与えようとするお槇と、子どもの命とひきかえに武蔵の命をとる覚悟を決めた梅軒の間に争いが起き、梅軒はお槇を木に縛りつけ、武蔵へ怒りの攻撃。武蔵は二刀流を開眼し、小刀で梅軒の手の甲を斬り、鎖鎌を破ります。
脚本は伊藤大輔内田吐夢はこの作品が遺作になりました。モノローグで心の動きを観客に伝え、“命のやりとり”という極限状態を見事に描いていますよ。“剣は暴力”という東映五部作の主張をこの作品で結論づけた感じです。上映時間76分というのは、吐夢監督が完成前に亡くなり、撮影済みフィルムだけで編集されたせいですかね。