西部劇ビデオの『ギャンブラー』(1971年/監督:ロバート・アルトマン)を観る。西部開拓時代末期の鉱山町を舞台に、酒場経営に賭ける男と女を描いた物語です。
流れ者の賭博師マッケイブ(ウォーレン・ビーティ)が小さな鉱山町で賭博場と売春宿をかねた酒場を開くんですな。元娼婦だったミラー(ジュリー・クリスティ)の才覚もあって酒場は大繁盛。鉱山を経営する大会社がマッケイブの酒場を買収にきますが、マッケイブは欲を出して断ったために、会社は3人の殺し屋を差し向けます。マッケイブは弁護士に相談したり、会社の代理人に会いに行ったりしますが、後の祭りで……
マッケイブが町にやってくる氷雨のシーンから始まり、雪の中での殺し屋との決闘まで、寒々とした景色の中で物語は展開します。現実は明るくないということを表しているんですね。ヴィルモス・ジグモンドのフォッグ・フィルターを使った撮影が効果をあげています。アルトマンがこの作品を演出するうえで触発されたと言っているレナード・コーエンが歌う挿入歌「冬のレディ」と「憐れみのシスターたち」もグッド。
売春宿からゴキゲンになって出てきた若いカウボーイ(キース・キャラダイン)が、殺し屋の一人に脅かされたあげく、拳銃を見せろと言われて銃に手をかけた瞬間、あっけなく撃ち殺されるのは、殺し屋たちの冷酷さを強調し、これから起こるであろう主人公と殺し屋の決闘への緊迫感を盛り上げます。ところが、この主人公、従来の西部劇ヒーローと違って逃げ回ってばかり。小屋に身を潜め、一人は入ってきたところを不意射ち、もう一人は窓越しに不意射ちして倒します。最後の一人には表に出たところをライフルで狙われて雪の中に倒れますが、死んだと思って近づいてきたところをズドン。
決闘の最中に、殺し屋が放った一弾で教会が火事になり、町民が総出で消火作業にあたるシーンが並行して描かれているため、決闘の緊張感がとぎれるのが難点ですね。重傷を負った主人公が雪に埋もれて死んでいくのは、アメリカン・ニューシネマの特徴である“人生の挫折”ですな。映画評論家には、予想以上に好評な作品ですが、面白い西部劇じゃありませ〜ん。