旧態依然の内容

nostalji2013-12-15

録画していた時代劇『新選組血風録近藤勇』(1963年・東映/監督:小沢茂弘)を観る。池田屋の斬り込みから天満屋事件までを描いた新選組物語ですが、全て近藤勇を中心においているので原作者の司馬遼太郎もビックリのフィクションだらけね。
池田屋襲撃で幕府転覆の陰謀を未然に防いだ新選組局長の近藤勇市川右太衛門)は藤堂平助徳大寺伸)を連れて江戸へ行きます。目的は将軍家茂(沢村精四郎)への倒幕組織対策の進言と、藤堂が奨める北辰一刀流伊東甲子太郎(安部徹)一門の入隊勧誘。伊東には新選組倒幕派に引き込もうという下心があって近藤は一抹の疑念を抱きますが、門弟の篠原泰之進木村功)には親近感を持ちます。篠原も近藤の人間味にひかれます。しかし、山南敬助佐藤慶)の脱走事件のあと、将軍慶喜山城新伍)からの新選組の旗本取立てに倒幕を目ざす伊東一派が脱退。坂本竜馬を暗殺したのが新選組と誤解した海援隊陸奥陽之助(青木義郎)が伊東に近藤を誘い出してくれるように頼み、伊東は近藤の愛人お駒(長谷川裕見子)の家を訪ね、海援隊の誤解を解く宴席を設けることを近藤に告げます。伊東一派に潜入していた斎藤一からの連絡で、それが伊東の近藤暗殺の罠と知った土方歳三加藤武)と沖田総司(品川隆二)は油小路で伊東を殺し、伊東一派を粛清。近藤は伊東との約束通り、陸奥に会うために単身天満屋で待ちますが、海援隊が襲ってきます。油小路から逃れた篠原も近藤を狙って天満屋へ。近藤救援のために新選組隊士も駆けつけ……
天満屋事件というのは、龍馬暗殺の嫌疑をかけられた紀州藩・三浦久太郎を襲撃した海援隊16名と護衛していた新選組10名の戦いです。近藤勇は関係ありません。乱闘の末、ほとんどが傷を負い、海援隊は中井庄五郎が死亡し、残りは脱出。新選組に死亡者なしですから、新選組の勝利といえるでしょう。この作品では、中井庄五郎(戸上城太郎)はお駒の父を殺し、町民を苛める悪い奴で、近藤に斬られて当り前の存在ね。
弱体した幕府に代わって京都の治安を守り、忠義の武士として描く近藤像は、1950年代の東映時代劇に描かれていたものと同じで変わりばえがしません。1965年のテレビ時代劇『新選組血風録』の方が人間ドラマとして厚みがありましたね。客が入らなかったのがわかります。だけど、内容はともかくとして、右太衛門の立回りは、現在の役者では出せない動きで、美しく迫力あるもので〜す。