変格ものとして

nostalji2013-12-20

録画保存していた時代劇『忠臣蔵外伝・四谷怪談』(1994年・松竹/監督:深作欣二)を再見。“四谷怪談”の主人公・民谷伊右衛門が浅野家の浪人だったことは知る人ぞ知るで、こちらは色と欲との不忠臣蔵の意味合いを持っていました。深作欣二は、この二つの物語を見事に融合させて傑作変格忠臣蔵を完成させています。
内匠頭(真田広之)が吉良(田村高廣)に刃傷をおこして浅野家は断絶。浪人となった伊右衛門佐藤浩市)は、堀部安兵衛渡瀬恒彦)たちと大石(津川雅彦)に仇討をせまりますが、大石の反応は冷ややか。「よしなき短慮ゆえに家を潰し」とか「今はまだ仇討はやりたくない」と、さりげなく言ってのける津川雅彦の飄々とした演技がグッドです。
父親(近藤正臣)譲りの琵琶を奏で、門付けで生計を立てていた伊右衛門は湯女のお岩(高岡早紀)に惚れられ一緒に暮らしはじめます。吉良家用人・伊藤喜兵衛(石橋蓮司)の孫娘・お梅(荻野目慶子)に絡む酔漢を伊右衛門が一閃のうちに倒したことからお梅に惚れられるのね。伊右衛門は金が必要になったら辻斬りもするドライな男で、お岩が身ごもったことを知って、お岩と別れてお梅と一緒になり吉良家に仕官しようと考えるのね。一方、お岩のもとにはお梅の侍女(渡辺えり)から預かった毒薬をもって宅悦(六平直正)が現れ、安産の薬と偽ってお岩に飲ませます。そのことを喜兵衛から知らされた伊右衛門が家に戻ると、お岩の顔は醜く崩れて死んでおり、その場にいた宅悦を不義密通者として斬り殺し、吉良家の清水一学(蟹江敬三)が二人を戸板に打ちつけて大川に流します。婚礼の夜、お岩の亡霊が現れ、伊右衛門はお梅・侍女・喜兵衛を惨殺。一学は仕官の条件として伊右衛門に大石暗殺を命じます。伊右衛門は討入のために川崎・平間村に滞在している大石に会いますが斬ることができず、駆けつけた浪士たちに斬られます。半分死んだ状態の時にお岩が現れ……
忠臣蔵”と“四谷怪談”が相反するように、忠義と不忠義、愛と憎しみ、生者と死者といった相反するものを1時間45分という時間の中に凝縮させて見事に映像表現しています。どっちつかずにならず、合体の魅力あふれる作品で〜す。