最後の東映特別娯楽版

nostalji2016-10-25

友人に送ってもらった『白馬童子・南蛮寺の決斗(前・後編)』(1960年・第二東映/監督:仲木睦)を観る。『風小僧』でアイドルスターになっていた山城新伍が人気を不動のものにしたのが、テレビ時代劇『白馬童子』でした。この作品は、テレビシリーズの第1エピソードを編集し、テレビサイズの上下をカットし東映スコープで劇場公開したものね。
葵太郎(山城新伍)は、長崎の町で新任カピタンのコープス(青柳竜太郎)を偽者よばわりする男が殺されるのを目撃します。殺された男の娘・夕香里(春海洋子)と手代・小助(神木真寿雄)を海賊・黒蜘蛛党が襲いますが白馬童子が救出。太郎は南蛮屋敷に忍び込み、コープスが黒蜘蛛党の首領・荒波雲右衛門と同一人物であることをつきとめますが、落とし穴に落ちます。(前編)
太郎は罠を抜け、脱出。貿易商人が次々に殺され、生き残ったのは顔に大火傷を負った玄海屋だけで、コープスに嫁がせようとする父に耐えかね家を飛び出した玄海屋の娘・雪江(水木淳子)を太郎が助けます。貿易を独占しようとする長崎屋がコープスと結託して玄海屋にばけていたのね。正体がばれたコープスは先手をうって奉行所の金蔵を襲い、長崎の各所に爆薬を埋め、奉行(月形哲之介)を脅して逃亡用の千石船を用意させますが白馬童子が現れ……
白覆面に白装束、白い獅子のたて髪を背中になびかせて、愛馬・流れ星を駆って白馬童子が登場。愛刀・日輪丸からくり出すは、その名も電光二刀流です。この必殺技が出れば、コープスの妖術も効果なし。液体火薬ニトログリセリンやエレキテルによる起爆装置などが出てくるトンデモ時代劇ですが、殺陣だけは大人の鑑賞にたえるしっかりしたものです。特にラストの山城新伍と青柳竜太郎の二刀流同士の対決はスピードがあって見応えがあります。青柳竜太郎は、戦前は極東キネマで数多くのチャンバラ映画に出ており、その経験を活かした感じです。
『風小僧』や『七色仮面』などのテレビシリーズのエピソードが編集されて子供向けの東映特別娯楽版として劇場公開されましたが、『白馬童子』はこの作品だけです。60年といえば前年の皇太子(現:平成天皇)御成婚でテレビ受像機が一躍普及しており、劇場でわざわざ観る人が少なくなったのでしょうね。東映特別娯楽版は、これが最後になりました。