週に一度は西部劇

DVDでリアルタイム(2001年2月)に観て以来の『楽園をください』(1999年/監督:アン・リー)を再見。ミズーリ州を舞台にした南北戦争劇です。

南北戦争開始前、ミズーリ奴隷制度をもった奴隷州でしたが、南北戦争が始まると北部・合衆国側につきます。ミズーリが北と南の境界州として位置していたために奴隷制度に反対する人たちがいたんです。そのため、ミズーリの住民はバラバラになり、住民同士が敵対するという最悪の状態になります。主人公のジェイク(トビー・マグワイア)はドイツからの移民二世で中立の立場でしたが、幼馴染の親友ジャック・ブル(スキート・ウールリッチ)の一家は奴隷を所有する南部派。ジャックの父親が北軍ゲリラに屋敷を焼かれて殺されたことから、ジェイクとジャックはブラック・ジョン(ジム・カヴィーゼル)率いる南軍ゲリラに加わります。1年後、ジェイクとジャックは仲間となったジョージ(サイモン・ベイカー)、ジョージが奴隷から自由にした黒人ホルト(ジェフリー・ライト)、冷酷な殺し屋ピット(ジョナサン・リース・マイヤーズ)たちと北軍ゲリラを襲撃。ジャックの父を殺した仇をとります。北軍に追われた、ジェイク、ジャック、ジョージ、ホルトは南軍親派のエヴァンス一家の世話になりますが、北軍に襲われたエヴァンスを救出に行ったジャックは腕を負傷して、治療のかいもなく死亡。息子が南軍ゲリラに加担している理由で父が殺されたことを知ったジェイクはブラック・ジョンと合流し、クァントレルの部隊に加わります。北軍を求めてローレンスの町を襲撃しますが、北軍の姿はなく、部隊は無抵抗な住民を殺して、金品を強奪。掠奪を潔しとしないジェイクとホルトは、ピットの残虐行為を止めますが、日頃からジェイクを毛嫌いしていたピットは追撃してきた北軍との銃撃の最中、ジェイクの命を狙います。ジョージを助けようとして負傷したホルトと、ピットの銃弾に傷ついたジェイクは、ジャックの恋人だったスー・リー(ジュエル)を預かってもらっているブラウン牧場で養生。ジェイクとスー・リーの間に恋が芽生え、二人は結婚し、テキサスへ母を捜しに行くというホルトと共にカリフォルニアに向けて旅立ちます。そして、途中でピットに出会い……

台湾出身のアン・リー監督の狙いは、“よそ者”が真の自由をつかむために闘う物語にあります。同国内の異邦人という視点を重視しており、ジェイクとホルトがそれを象徴しています。ジェイクはドイツ系アメリカ人で、南北戦争当時、ドイツ系アメリカ人は殆どが北軍派。彼は友情と生まれ育ったミズーリのために南軍として戦います。ホルトは奴隷でしたが自由にしてくれたジョージのために南軍として戦っていますが、南軍仲間から時として二人は“ドイツ野郎”“ニガー”という侮蔑の言葉をはかれます。二人とも南軍では“よそ者”なんですね。戦いを捨て、新たな旅立ちをするラストが爽やかです。

リアルタイムで観た時に気に入ったのが、スー・リー役のカントリー歌手のジュエル。土の臭いがするカントリーガールがよく似合っていました。この作品に西部劇の雰囲気を醸し出したのは、映画初出演とは思えない彼女の存在。エンドクレジットで流れる彼女の歌「ホワッツ・シンプル・イズ・トゥルー」が良くて、彼女のCDを買い集めましたよ。アコースティック・ギターを中心としたシンプルなメロディで、オッサンにもとっつき易く、彼女の澄みきった声質で聴かせる歌唱力に心が洗われます。彼女のデビュー・アルバム「心のかけら」は、50万枚以上の大ヒット。

リアルタイムで観た時は、トビー・マグワイアとスキート・ウールリッチ以外は知らない役者ばかりでしたが、ジム・カヴィーゼルサイモン・ベイカージェフリー・ライトなどはその後のドラマや映画で顔なじみになりました。それと“アベンジャー”シリーズのハルク役だったマーク・ラファロも捕虜役で出ていましたよ。

傑作とまではいきませんが、心に残る作品で~す。