週に一度は西部劇

第14回京都ヒストリカ国際映画祭で上映されたという西部劇『オールドヘンリー』(2021年/監督:ポッツィ・ポンチローリー)を観る。この映画祭では、過去にも『ブラックソーン(ブッチ・キャシディ最後のガンマン)』や『ミッション・ワイルド』といった味わい深い西部劇を上映しています。

『オールドヘンリー』は、1906年オクラホマ、保安官バッチをつけた3人男に追われていた男が、彼らから拷問を受けて吊るされるところから物語は始まります。息子(ギャビン・ルイス)と二人で暮らす農夫のヘンリー(ティム・ブレイク・ネルソン)は、鞍に血のついた馬を発見。乗り主を捜すと負傷して意識がなく、近くに落ちていた鞍カバンには大金が入っています。ヘンリーは躊躇しながらも、その男を家に連れ帰って治療。男(スコット・ヘイズ)は、自分は保安官だと言いますが、ヘンリーは簡単に信じません。やがて、冒頭シーンで出てきたケッチャム(スティーブン・ドーフ)たち3人の男が現れ……

ヘンリーの行動からただの農夫ないことはすぐに予想がつきます。そして、鞍カバンを隠した秘密の納戸に保管されていた新聞記事と彼の名前がヘンリー・マッカーティということから西部劇に詳しいファンであれば彼がビリー・ザ・キッドじゃないかということもね。ビリー生存説は根強いものがあって、『ヤングガン2』では老いたビリーが自身の過去を語るという形になっていましたね。それにしても、ビリーが齢をとったらこんな顔になるんじゃないかと思うほど、ティム・ブレイク・ネルソンは似ていますよ。

でもって、この作品ですが、女性はひとりも登場しないし、黒人も登場せず、21世紀の西部劇にしては珍しい内容。無法者だった過去の経験と勘が、追う者も追われる者も信用できる人物でないと感じるティム・ブレイク・ネルソンの無言の演技がグッドです。自分のような人間にしたくないと思って育てた息子に隠していたことが逆に足かせになる皮肉。銃撃戦に関しては物足らないところがあるのですが、脚本がしっかりしていて、味わいある作品になっていま~す。