録画したままだった『ヴェラクルス』(1955年/監督:ロバート・アルドリッチ)を再見。南北戦争直後のメキシコを舞台にした西部劇。
南北戦争が終わり、南軍大佐だったトレイン(ゲーリー・クーパー)が一旗あげようと革命騒ぎにゆれるメキシコにやってきます。エリン(バート・ランカスター)という無法者から買った馬は、メキシコ政府軍の馬。メキシコ兵に追われた二人は、馬をめぐって対立しますがエリンはトレインに一目おくようになります。メキシコには無法者たち(アーネスト・ボーグナイン、チャールズ・ブロンソン、ジャック・イーラムなど)が流れ込んできており、エリンは彼らのボス的存在。メキシコはファレス率いる革命軍が政府軍と戦っており、政府軍のラボルデエル侯爵(シーザー・ロメロ)が彼らを雇います。皇帝にから銃の腕を見込まれ、伯爵令嬢(デニーズ・ダーセル)をヴェラクルスまで送る護衛役を頼まれますが、この旅行の真の目的は、馬車に隠した金貨の輸送。へんな友情で結ばれたトレインとエリンはそれを見破り……
トレインの財布を盗んだメキシコ娘(サリタ・モンティエル)とのユーモアある絡みを交えて、金貨を狙って政府要人・革命軍・無法者集団が戦いを繰り広げる、アクションにつぐアクション、逆転また逆転と、見せ場の多い第1級の娯楽西部劇になっています。最近の息つく暇のないアクション映画ばかり観ている人には緩い感じを持つかもしれませんが、私ら団塊の世代の年齢になると丁度良いリズムになっています。最近のアクション映画は疲れるだけ。西部劇のオールタイム・ベストテンを選ぶ時、この作品のようなアクション中心の西部劇は時代とともに評価が下がってきますが、面白いものは面白いんです。
この作品では、不敵にニッと白い歯を見せて笑うランカスターが目立ち、美味しいところをさらって、主役のクーパーを完全に食っているのですが、食われたクーパーもさすがで、いぶし銀の味わいがあって、私は観るたびにランカスターよりもクーパーの方に魅力を感じます。今回、再見して気づいたのは、冒頭でクーパーが足を痛めた馬を引いてくるんですが、差別用語ですが馬がビッコをひいていること。足を痛めているのでこれまで当然の事と見過ごしてきたのですが、これは調教師による馬の演技なんですね。何でもないシーンにも手を抜いていないアルドリッチは見事。