週に1度は西部劇

BSシネマで放送された『カウボーイ』(1958年/監督:デルマー・デイビス)を再見。公開当時、カウボーイの生活を写実的に描いて好評だった作品。原作は、フランク・ハリスの自伝『わが生涯と恋愛』の中の「カウボーイの想い出」です。

フランク・ハリス(ジャック・レモン)はシカゴの若いホテルマンで、カウボーイになることを夢見ています。ハリスはホテルに滞在しているメキシコの大牧場主ヴィダルの娘マリア(アンナ・カシュフィ)と愛しあっていますがヴィダルは大反対。牛を運んできたトム・リース(グレン・フォード)が大金を手にして、ホテルにやってきます。彼はホテルの気に入りの部屋を要求。その部屋にはヴィダルがいましたが、リースがヴィダルの牛の買い付けを約束すると、ヴィダルはマリアを連れてメキシコへ帰ります。ポーカーで負け続けているリースはハリスに金を借り、うっかり彼を牛飼いのパートナーにすることを約束。翌朝、われにかえったリースは、やってきたハリスに牛飼いが生易しい仕事でないことを説明しますが、ハリスは頑としてきかず、カウボーイに仲間入り。メキシコでヴィダルの牛を買い付け、シカゴまで牛を運ぶ仕事が始まります。ハリスはカウボーイとして成長していき……

喜劇演技が持ち味のジャック・レモンがいたって真面目なカウボーイ役なのでめんくらいます。演技の上手さは別として、何度見てもミスキャストですな。カウボーイ役で出演しているのは、テレビドラマ『奥さまは魔女』のダーリン役で知られるようになったディック・ヨーク、ガラガラヘビに噛まれて死ぬ端役時代のストローザ・マーチン、ガンマン生活から足を洗おうとしているブライアン・ドンレヴィ、性格の悪そうなリチャード・ジャッケルね。

内容はというと、牛の暴走やインディアンの襲撃、ラブロマンスもありますが、それらはほんの色どりにすぎず、荒野で牛を追う単調な明け暮れ、わずかな食料の寒々とした野宿といった、カウボーイの仕事はきびしく苦しいことを描いています。そして、“自分のことは自分で始末する”というカウボーイのルールを教えているんですな。70年代のニューシネマからカウボーイ生活はリアルに描かれるようになりましたが、この作品当時としては意欲的な西部劇であったことは間違いありません。洒落たタイトルクレジットはソール・バスによるものですが、映画の内容とマッチしておらず、彼の起用はあきらかに失敗で~す。