外出したついでに

ブックオフで格安だったDVD“フランス映画パーフェクトコレクション”をゲットし、収録されている『女だけの都』(1935年/監督:ジャッゥ・フェデー)を観る。進軍してくるスペイン軍から女たちが町を守る艶笑喜劇。

1616年のフランドール地方(現在のベルギー)にある城塞都市ボーム。市長夫人コルネリア(フランソワーズ・ロネ)は祭りの準備で大忙し。市長(アンドレ・アレルム)たち市の重役たちは、画家のブリューゲル(ベルナール・ランクレ)に記念の団体肖像画を描かせています。市長の娘シスカ(ミシュリーヌ・シェーレル)とブリューゲルは恋人同士。コルネリアは二人の仲を知っていますが、市長は自分の家畜を買ってもらうためにシスカを肉屋と結婚させようと思っています。そんな中、スペインの特使オリヴァレス公が軍隊を率いてボームで一夜を過ごすという知らせが入り、市長たちは驚愕。夜ともなれば、かつてフランドール地方がスペイン軍の侵略によって、殺戮・掠奪をほしいままにされたような事態が起こることを恐れたんですな。そこで市長は自分が死んだことにして、全ての男子を喪に服させて一歩も戸外へ出さず、スペイン軍を通過させるという計画をたてます。男たちの意気地なさに市長夫人を先頭に町中の婦人たちが結束。城門前に正装整列した婦人たちが出迎えたオリヴァレス公(ジャン・ミュラー)は、市長の急死を聞き、静粛に一夜を送って立ち去ることを約し、軍隊は粛々と城内に進み、分宿することになります。ところがボームの婦人たち、町の男性に愛想をつかした矢先、たくましくも紳士的なスペイン将兵に感激。祭りの代わりに全市をあげて夜を徹しての歓迎の宴を開催。酒と踊りと歌。死を装った市長と喪に服した男たちは、彼らの妻や娘がスペインの軍人と戯れている声を聞いて、心穏やかでいられませんでしたが……

風車を近景にした道、種をまく農夫のいる畑、朝日を浴びて清々しい田園風景は、ブリューゲルの風景画を連想させます。女性の力は偉大なりという機知と諷刺のコメディですが、物語構想の豊かさ、大らかでユーモアと皮肉をまじえたドラマティックな展開、適材適所の配役、美術、撮影にいたるまで、風格あふれる風俗絵巻の力作になっていま~す。