お次は国際的

録画していた『徳川セックス禁止令 色情大名』(1972年/監督:鈴木則文)を観る。セックスを禁止したことから起こる騒動を描いた官能時代劇です。

九州唐島藩主・小倉忠輝(名和宏)は女嫌いで独身だったために、将軍家斉(田中小実昌)の34番目の娘・清姫杉本美樹)の嫁ぎ先に選ばれます。二人の初夜は味気なく、清姫の教育係・藤浪(三原葉子)から忠輝のテクニック不足を言われた家老の勘兵衛(殿山泰司)は、博多屋(渡辺文雄)に忠輝の性技術習得を依頼。博多屋お抱えのサンドラ(サンドラ・ジュリアン)と三日三晩性体験をした忠輝は、女体の“天国”を知り、町民が自分の知らないところでこんな楽しいことをしていたことに怒りをおぼえ、セックス禁止令を出しますが……

“トラック野郎”シリーズの鈴木則文らしく、石井輝男と打って変わってコメディー・タッチ。フランスからサンドラ・ジュリアンをよんで、歌まで歌わせて殿さまへ性指南。日本の男は下手ねェ、と思ったかどうかは知りません。スケ番女優の杉本美樹のカマトトぶりもグッド。勘兵衛のスケベエ息子役で山城新伍が出演しており、三原葉子とチョメチョメしま~す。

f:id:nostalji:20210331124402j:plain

 

お次は刺青

録画していた『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/監督:石井輝男)を観る。女体に墨を入れることに情熱をささげる彫師を描いた官能時代劇です。

いれずみ師・彫五郎の弟子・彫秀(吉田輝雄)は、刺青した女ばかりの売春宿の新参女郎・由美(片山由美子)の肌に惚れ込んで墨を入れます。売春宿の女将・お竜(藤本三重子)は由美をレズ相手にしており、由美を犯した弦造(林真一郎)を殺害。売春宿から逃げ出した由美は、与力の鮫島(田中春男)に捕らえられ、弦造殺しで火あぶりの刑になります。鮫島とお竜は、裏で刺青女の人身売買をしている長崎領事のクレイトン(ユセフ・ホスマン)と結託して、女郎やお絹(葵三津子)たち女囚を長崎の異人館へ移送。彫秀は、彫秀の腕前を妬んでいる兄弟子の彫辰(小池朝雄)と鮫島の悪計により彫五郎殺しの罪をきせられ、島送りになります。お竜は彫秀の恋人お鈴(橘ますみ)に目をつけ、弦造の妹ゆき(尾花ミキ)とともに長崎へ送り、彫辰がお鈴に刺青。お鈴は服毒し、島破りして長崎にきた彫秀に一部始終を語って死にます。復讐の念にもえた彫秀は、クレイトンの娘ハニー(ハニー・レーヌ)を誘拐して墨を入れますが……

次々に見せ場を繰り出す、そのめくるめく映像展開に圧倒されます。女が逆さづりになっているのを、素通しの1枚ガラスの下から撮ったり、カメラを天井にすえて真上から長まわしで人物を追ったり、無国籍めいた混沌とした街を、女二人が逃げまわるのをえんえんと撮ったりと、面白がって演出していますね。必要性はないのに、串刺しの刑、ノコギリでの首切りの刑、股裂きの刑などグロへのサービスも忘れていません。

気の弱い男や人の好いオヤジ役が多い田中春男が、白塗りの悪役。これまでにない役で田中春男は嫌々演じている感じ。藤本三重子という女優を知らなかったのですが、女優でなく歌手だったのね。ヒット曲がないので、知らなくて当然。

石井輝男のエログロ時代劇路線は、撮影所内の反発からこれが最後になります。だけど、『恐怖奇形人間』など、形を変えて石井ワールドは東映の中で続いていきま~す。

f:id:nostalji:20210326121607j:plain

 

異常性愛3本立て

録画していた『残酷異常虐待物語 元禄女系図』(1969年/監督:石井輝男)を観る。医者をストーリーテラーにした3編からなるオムニバス官能時代劇です。

おいとの巻

遊び人の半次(山本豊三)に騙され、おいと(橘ますみ)は吉原の女郎に転落。やがて、ある御大尽(上田吉二郎)の寵愛を受けますが、半次を忘れられず、吉原から脱走。捕まったおいとは拷問を受け、医師・玄達(吉田輝雄)のもとへ運ばれますが……

おちせの巻

豪商の娘・おちせ(葵三津子)は、下賤な男や奇形の者との情事にふけっており、おちせを愛する手代の長吉(石浜朗)は医師・玄達に治療を依頼。催眠療法により、おちせの性癖が顔のただれた片目の男(沢彰謙)に犯されたことによるものとわかった長吉は……

おみつの巻

好色な藩主・正親(小池朝雄)は、新参の愛妾・おみつ(尾花ミキ)と異常な愛の行為に没頭。お紺の方(賀川雪絵)は犬との獣姦をしているところを正親の見つかり、全身に金粉を塗られます。お紺の方は、一世一代の趣向を正親に披露すると言い逃れ、医師・玄達に人体解剖の機会をあたえると誘い……

土方巽が踊るタイトルバックはケレン味たっぷり。タイトルだけで内容を象徴しており、エログロだらけの石井ワールドが展開。吉原の花魁役でカルーセル麻紀が出演しているんですが、石井監督の要求にはマイッタらしく、以後の石井作品への出演は断ったそうです。3編のうち、一番面白かったのが「おみつの巻」ね。小池朝雄が圧倒的存在感をもっており、可笑しさを通り越して凄さを感じましたよ。良識ある人には悪評作品ですが、映画好きには何か惹きつけるものがありま~す。

f:id:nostalji:20210326121501j:plain

 

今週はエロ時代劇

録画していた『徳川女系図』(1968年/監督:石井輝男)を観る。人間不信の将軍・綱吉と、二大派閥で争う大奥の生活を描いた官能時代劇です。

5代将軍・綱吉(吉田輝雄)の大奥では、御台所(三浦布美子)派とお伝の方(三原葉子)派の二つのグループに分かれて対立。正月16日の夜、綱吉は遠眼鏡で新参舞の裸踊りを覗き、内腿にホクロのあるおみつ(御影京子)に惹かれます。しかし、おみつは二派の争いに巻き込まれ、拷問を受けて追放。綱吉は女相撲の勝者・おさよ(賀川雪絵)の天真爛漫さを寵愛しますが、それが偽りとわかり、人間不信になります。柳沢吉保南原宏治)が献上した染子(応蘭芳)が懐妊しますが、染子は御台所派なので、お伝の方はねたんで、染子の腹の子は吉保との間にできた子と綱吉に告げ口。綱吉はますます人間不信になり……

テレビの普及で映画界の斜陽化が急速に進む中、低予算のピンク映画が台頭。それに対抗すべく東映が、新東宝時代にエログロ路線で鳴らした奇才・石井輝男を起用して大ヒットとなったエロ時代劇の第1作目です。大奥の女中はみんな裸にならなきゃいけないので、ピンク映画の女優が多勢出ています。内田高子・谷ナオミ・辰巳典子・祝真理・高島和子・一星ケミ・火鳥こずえ、加山恵子など。当時ピンク映画を愛好していた人は、知った顔がたくさん出てくるので楽しかったでしょうねェ。

f:id:nostalji:20210326121334j:plain

 

週に1度は西部劇

友人に送ってもらった『デスペラード・ガールズ 欲望の荒野』(2015年/監督:ストーミー・ダニエルズ)を観る。デカパイの姐ちゃんが宝の地図を巡って悪党保安官と対決するC級西部劇です。

お尋ね者の女賭博師ダニー(ストーミー・ダニエルズ)が友人のバーディとアリゾナの小さな町にやってきます。町の資産家ギャレットが愛人のジョアンナとHした後に死に、保安官がジョアンナを逮捕。保安官とギャレットの妻はグルでギャレットの資産を自分のものにしようとしていたのね。ジョアンナの友人ライラからそのことを聞いたダニーは、ジョアンナを助け出し、ギャレットの遺書を預かっているというサムと町から脱出。保安官は追跡隊を募り、その中にダニーを追っているモーガンがいます。モーガンはダニーたちを見つけますが……

ギャレットがジョアンナに遺した銀鉱山の地図を巡って保安官たちと銃撃戦(かなりショボイ)があるのですが、見せ場はそんなものじゃなく、Hシーンだと思われます。監督・主演がポルノ女優のストーミー・ダニエルズですからね。だけど上映時間が、IMDbでは96分になっているのに、65分しかなく、Hシーンはカットされたようです。お話が繋がらないところもあります。一番の売りをカットして、デカパイ姐ちゃんのコスプレだけを見たって楽しくありませ~ん。

f:id:nostalji:20210326121237j:plain

 

続きで

風野真知雄:著の『鹿鳴館盗撮』(角川文庫:2014年11月25日初版発行)を読了。元幕臣北辰一刀流麒麟児と呼ばれた“剣豪写真師・志村悠之介”シリーズ2作目です。

かつての幼馴染で、今は鹿鳴館の華と云われる沢田子爵夫人・百合子と横浜で再会した悠之介は横浜の街並みを撮影。何者かにつけられ、家に戻ってくると警官が横浜で撮った写真原板を没収して破棄します。悠之介がその理由を探り始めると、外務大臣井上馨が関係していることがわかり、井上馨接触。なりゆきから井上の用心棒までつとめることになった悠之介は首相の伊藤博文と知りあいます。井上馨の背後には伊藤がおり、英国との条約改正にかかわる秘密があると考えた悠之介は、百合子との縁で、鹿鳴館で開かれる仮面舞踏会に潜入。伊藤が行った取引を盗撮しますが……

悠之介は前作『西郷盗撮』で知りあった混血の美人写真師・小夜と結婚して子どもまでいますが、百合子と逢瀬を重ねます。この恋模様と、百合子を狙う英国人や混血の暗殺者の行動が、ノルマントン号事件の謎に絡んで展開。明治外交の裏側を暴く一遍で~す。

f:id:nostalji:20210326121107j:plain

 

ヒット作品というので

録画していた『ゲットバック-絶体絶命-』(2019年/監督:ロマン・プリグノフ)を観る。無一文となった銀行家が自分の銀行を襲うロシア製クライムアクションです。

大富豪の銀行家レビン(ウラジミール・マシコフ)は、かつて精子提供を行った自分の知らない子供たちとの相続トラブルを避けるために資産をビジネスパートナーの名義にしていたため、ビジネスパートナーの急死により、その娘のリューダ(アレクサンドラ・ボルティチ)に全財産を奪われます。無一文になったレビンは、捜し出した子どもたちとチームを組み、資産の実体が自分のものであるという証拠の書類を入手するために、銀行の金庫室襲撃を計画。子どもたちの特技を活かして銀行に潜入しますが……

ハッカーや元犯罪者など裏道人生を歩んでいた子どもたちと、本当の親子関係になっていくのが見どころなんでしょうが、主人公の性格がいびつで感情移入できません。銀行襲撃も緻密さがなく、極めてイージー。ロシアでは大ヒットしたそうですが、それほどの作品じゃありません。国民性の違いですかねェ。

f:id:nostalji:20210321121922j:plain