手塚治虫が目指したものは……

nostalji2010-04-25

桜井哲夫:著の『手塚治虫』(講談社現代新書:1994年5月27日第7刷発行)を読了。手塚治虫の人生を追いながら、作品にこめられた意思を解析しています。例えば、晩年の『ルードウィッヒ・B』の中の、「新人というのは、自分で一番書きやすい作品をイソイソと持ってくる。だが、こちらからこういうものを書けというテーマを与えると、たいてい書けずに閉口する。そこがその新人の実力なんだ」というセリフは、すべて自分で、原作・脚色・作画をこなしてきた手塚自信の誇りが表れているんですね。それと、編集者の要求に応えて作家主義と商業主義のはざまで仕事してきたプロとしての自負ね。
手塚治虫といえば、『鉄腕アトム』なんですが、手塚自身は「駄作だ、金儲けの作品だ」とみなしていたそうで、『ジャングル大帝』を一番気に入っていたようです。だけど、私も著者と同様に、『ジャングル大帝』はあまりにディズニー的で、それほど優れた作品とは思えないんですよ。カラーによるテレビアニメは、映像がキレイだったことぐらいで、動きが稚拙であっても、『鉄腕アトム』は心に訴えかけてくるものが多かったですね。
手塚マンガを読み、手塚アニメを観ていた世代にとって、手塚研究の手引きとなる好著で〜す。