記念すべき第1作

nostalji2013-01-25

無声時代劇DVDの『右門一番手柄・南蛮幽霊』(1929年/監督:橋本松男)を観る。“鞍馬天狗”と並ぶ、アラカンの十八番となる“むっつり右門”の第1作です。佐々木味津三の原作も“右門捕物帖”の第1作目で、脚本を書いた山中貞雄の名が世に出た最初の作品でもあります。
八丁堀組屋敷で行われた慰労の宴の余興芝居で、虎に扮した岡引きの長助が加藤清正の槍で殺されるという事件が起きるんですな。加藤清正役の同心は何者かに催眠術で眠らされて縛られており、右門(嵐寛寿郎)が事件の捜査を開始します。同じように眠らされて金を奪われた町人の事件現場に落ちていた将棋の駒と、殺された長助がインチキ賭け将棋の一味を調査していたことから、将棋の駒を手がかりに犯人を追いつめていくのは原作通りです。原作との違いは、原作では登場しないアバタの敬四郎(尾上紋弥)が出てくることですかね。
竹中労:著の『鞍馬天狗のおじさんは』によると、原作にはなかった右門の引立て役の“アバ敬”を創出したのは、山中貞雄だったとのこと。佐々木味津三も“アバ敬”のキャラが気に入り、小説で使うようになったのね。ちなみに、“アバ敬”の本名・村上敬四郎は、演じた尾上紋弥の本名だったんですよ。右門が推理するときに人差し指を立ててアゴに手を持っていく仕種もこの作品から生まれ、右門の決めスタイルになりました。右門は映画では他に大友柳太朗が、テレビシリーズでは中村竹弥・黒川弥太郎・中村吉右衛門杉良太郎(2回)が演じていま〜す。