週に一度は西部劇

録画していたBSシネマの西部劇『夕陽に向って走れ』(1969年/監督:エイブラハム・ポロンスキー)を再見。実話をベースにアメリカの病根を追究したニューシネマ西部劇です。

年に一度の祭りにインディアン保護区に帰って来たウイリー・ボーイ(ロバート・ブレーク)は、恋人ローラ(キャサリン・ロス)の父に結婚の承諾を求めますが反対され、逢引きしているところに父親がやってきて、誤って彼を射殺。ウイリーとローラの逃避行が始まります。保護区監督官で女医のエリザベス(スーザン・クラーク)は、保安官補のクーパー(ロバート・レッドフォード)にローラを連れ戻すように依頼。クーパーは遊説中の大統領護衛の予定でしたが、追跡隊を組織。ウイリーの巧みな逃亡に追跡隊は惑わされ、クーパーは追跡を断念し、カルバート(バリー・サリバン)に追跡を任せて大統領護衛に戻ります。その頃、ローラとともに岩山に立て籠もっていたウイリーは、追跡隊の馬を狙って撃った弾丸がカルバートに当たってしまったことから騒ぎが大きくなり……

「この作品はインディアンを描いたものではない。私自身を描いたものである」とポロンスキーが語っているように、赤狩りでハリウッドを追放された20年間の想いが、ウイリー・ボーイの逃避行に反映されています。この映画の優れている点は、ウイリー・ボーイの視点からだけでなくクーパーの視点からも描かれているところですね。インディアンを蔑視する白人社会への単純な告発でなく、アメリカ社会そのものへの告発になっています。クーパーはインディアン社会を理解していますが、彼らに対しては上目線。エリザベスもインディアンの味方ふうに見えますが、白人と同化しようとしているローラのようなインディアンが対象。良識的と云われるようなアメリカ人への告発にもなっています。『明日に向って撃て!』と違って、西部劇としての面白みはないものの、いつわりのないアメリカの素顔をさらけ出した傑作で~す。

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