最後はしっとりと

録画していた『時雨の記』(1998年/監督:澤井信一郎)を観る。渡哲也が吉永小百合と30年ぶりに共演した大人のラブロマンスです。

大手建設会社の専務・壬生(渡哲也)は、20年前に心に留めた女性・多江(吉永小百合)に偶然再会し、思いきって話しかけ、翌日、多江が住む鎌倉へ。夫を亡くした多江は、生け花を教えながら鎌倉でひっそりと暮らしていました。少年のような壬生の一途な想いに、多江は戸惑いながらも惹かれはじめ、逢瀬を重ねるようになり……

昭和から平成にきりかわる平成元年を舞台設定にしており、主人公は昭和の日本の高度成長を支え、会社と家族に人生を捧げてきた企業戦士。そんな彼が、老後という人生の最晩年を自分のために生きたいと思い、不倫に踏み切ります。それは肉体関係を結ばない心と心の愛で、現代の感覚からすると古臭いものですが、渡哲也と吉永小百合が演じると納得感があるんですよ。30年前に二人が共演した『愛と死の記録』と同じ世界ね。吉永小百合が渡哲也を相手役に指名したというのが、うなずけます。出会いから半年後に、壬生は狭心症で多江に看取られながら息を引き取るのですが、白血病で死んだ渡哲也の後を追って自殺する『愛と死の記録』と違って、『時雨の記』の吉永小百合は、愛する男の死をしっかり受けとめ強く生きる女になっていました。

時雨の鎌倉、紅葉の京都、晩秋の飛鳥路の風景を背景に、しっとりとした純愛映画で~す。

『愛と死の記録』についてはココヘ⇒広島が舞台で - ノスタル爺の日記 (hatenablog.com)

f:id:nostalji:20210106124656j:plain