録画していた『博徒対テキ屋』(1964年・東映/監督:小沢茂弘)を観る。“人生劇場”で任侠路線への手掛かりをつかんだ東映が、本格的なヤクザ映画として路線を確立したのが高倉健の“日本侠客伝”と鶴田浩二の“博徒”でした。これは“博徒”シリーズ3作目。
浅草を縄張りとするテキ屋・菊屋一家は、浅草進出を考えているデパートを利用して縄張り拡大を狙う滝岡組に狙われています。滝岡組の組長・滝岡(近衛十四郎)は上州馬賊の小松(安部徹)を使って菊屋一家に嫌がらせ。菊屋一家の組長・貴島政吉(片岡千恵蔵)の次男・勝男(松方弘樹)は上州馬賊と喧嘩して政吉から謹慎させられます。政吉には長男の竜太郎(鶴田浩二)がいますが、母親の密通からできた不義の子で、家を出て今は国分組の代貸をつとめる博徒。デパートの大島社長(内田朝雄)は国分組の協力を得て、建設計画を進めており、浅草の露天商の生活を心配する竜太郎は大島に抗議。竜太郎は大島から、転業者には助成金を用意しており、テキ屋組合の代表として滝岡に資金10万円を渡していることを知らされます。竜太郎の親分・辰之助(加藤嘉)は、テキ屋同士のいざこざに係わらないように竜太郎に言いますが、菊屋一家で兄弟分だった水島(大木実)が滝岡に殺され、政吉も小松に刺されて死んだことから、滝岡一家に殴り込み。
時代は昭和初期、鶴田と近衛の対決はドスをもってのチャンバラ。屋根の上での大アクションで近衛は恐怖の表情を見せるのですが、鶴田を恐れたわけでなく近衛は高所恐怖症だったとのこと。博徒とかテキ屋という業界?用語が一般化したのはこの作品からです。ちなみに、本職のテキ屋が指導・考証しています。縁日の香具師役は大阪の芸人。中田ダイマル・ラケットに鳳啓介・京唄子ね。藤山寛美も顔を見せています。鶴田の恋人役は島倉千代子。意外と好演技。歌手が任侠映画に出演したのはこれが最初。主題歌はありませんが、島倉が劇中で歌っています。松方弘樹の恋人役で藤純子が、鶴田の幼馴染の刑事役で丹波哲郎が出演していま~す。
