録画していた『座頭市兇状旅』(1963年・大映/監督:田中徳三)を観る。下仁田一家の跡目襲名花会で賑う上州下仁田宿にやって来た座頭市は、笹川で別れたおたね(万里昌代)と再開する。おたねの夫・棚倉蛾十郎(北条寿太郎)は、飯岡の助五郎の舎弟だった矢切りの藤五郎(安部徹)に雇われた殺し屋だった。藤五郎は気弱な下仁田の佐吉(成田純一郎)の縄張りと市の命を狙っており、佐吉をけしかけて市を殺そうとする。恋人おのぶ(高田美和)の頼みもきかず、佐吉はヤクザのしがらみから市を呼び出すが……
冒頭の相撲シーンや祭り囃子にあわせて踊りながら去っていくラストに見られるユーモラスな面や、斬った男の母親に金を渡す人情性など、これまでにない市のキャラが加わりました。座頭市=カツシンの確立です。居合い斬りのデモンストレーションやライバルとの一騎打ちも定番化しましたね。おたねの死によって第1作からの一連の流れも本作品で決着し、座頭市の完成型といえます。知名度のない役者のために話題になりませんでしたが、仕込み杖を折られた市が柄に仕込んだ小刀で倒す蛾十郎との対決は見応えがありました。柄に仕込んだ小刀というアイデアは、テレビ時代劇など他の作品に盗用されていますね。全体的にバランスのとれた上出来作品といえま〜す。
立川談志(75歳)さんが亡くなる。最近は落語を全く聴いていないのですが、30年前は好きで寄席通いをしたこともあるんですよ。私が天才だと思った落語家が3人いまして、談志さんはその一人です。落語を論理的に説明でき、それを高座で見事に実践していましたね。後の2人は、古今亭志ん朝(語り口の巧さでは最高)と桂枝雀(破天荒な芸風は最高)でして、上手な落語家はこれからも出てくるでしょうが、強い感動をあたえる落語家となると……